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習近平主席が提唱した“人類運命共同体”、米中衝突を回避できるか?=「カギは経済と軍」―宮本雄二・元中国大使

配信日時:2018年2月2日(金) 5時40分
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宮本雄二元中国大使が「2期目の習近平体制」と題して記者会見。習近平主席が提唱した“人類運命共同体”は「真面目に追求したいと思っている」と指摘したうえで、米中衝突を回避できるかのカギは「経済と軍にある」と強調した。写真は会見風景。

2018年1月30日、宮本雄二元中国大使が「2期目の習近平体制」と題して日本記者クラブで記者会見した。習近平外交の特徴は、明・清時代の中国を取り戻し、豊かで強く、美しい中国を作るという国家目標を設定していることであると指摘。国力とイデオロギー面で「米国ともろに衝突する懸念がある」と憂慮しながらも「経済の相互利益の拡大を通じ、米国に代表される既存秩序の擁護者との根本的な矛盾を回避・緩和できるかどうかが今後を占うカギとなる」と見通した。また習主席が提唱した「人類運命共同体」について、「真面目に追求したいと思っている」とした上で、この理念をを支える原則を見出し、軍拡抑制などを具体化するルールを決めるよう促した。

宮本氏は2006年から4年間中国大使を務めた外務省チャイナスクールの代表格。『習近平の中国』『これから中国とどう付き合うか』などの著書があるほか、昨年11月に『強硬外交を反省する中国』(PHP新書)を上梓した。 発言要旨は次の通り。

中国外交の特性として以下の3点があげられる。
(1)中国の発展と変化により、トウ小平外交の国際協調路線の限界が露呈。経済合理性が要求する協調外交とナショナリズムが要求する強硬外交の矛盾が顕在化している。

(2)中国外交は、毛沢東周恩来・トウ小平時代には指導者に一元化していたが、江沢民胡錦濤時代には制度化が進展し、一元化できなかった。習近平主席は外交政策決定メカニズムの変革と指導者への一元化を目指している。

(3)「外交」が「内政」の反映となった。内政におけるナショナリズムの位置づけが高まり、不満の「はけ口」として日本問題が提起されるケースがある。対日関係の進展は、中国指導者の国内掌握の程度と密接に関係している。習近平の国内掌握は確実に進展したが、まだ万全ではない。カギは経済と軍にある。

習近平外交の特徴は、明・清時代の中国を取り戻し、豊かで強く、美しい中国を作るという国家目標を設定していることだ。国力とイデオロギーにおいて米国ともろに衝突する懸念がある。名実ともに地政学的対立関係にあるが、経済の相互利益の拡大は、国境を越え深化している。共通の利益の拡大を通じ、米国に代表される既存秩序の擁護者との根本的な矛盾を回避・緩和できるかどうかが今後を占うカギとなる。

習主席は「人類運命共同体」を提唱、調和世界を追求している。具体的な中身はまだ不明だが、彼が人の耳目を欺くために(方便として)この概念を打ち出したとは思えず、かなり真面目に追求したいと思っている。彼はサラリーマン社長だった江沢民・胡錦濤と異なりオーナー社長の2代目(太子党)なので、中国をいかに尊敬される国にするか考えている。ただ「人民解放軍を強くする」とだけ言っているが、その役割と「人類運命共同体」の理念をを支える原則を説明すべきである。軍拡抑制などを具体化してルールを決め、ルールの実施が担保される仕組みを考える必要がある。一刻も早く整理し説明しないと安全保障専門家(軍事当局)の出番となってしまう。このままでは米国防総省は中国を「敵国」とみなし、軍事衝突の危険が高まってしまう。

最大の矛盾は、「核心的利益」の概念だが、昨年10月の共産党大会でこれに言及しなかった。この事実は習氏が外交上その扱いが著しく難しい「核心的利益の概念」を脇に置いて、外交の立て直しを図った可能性も出てきたといえる。
 
日中共に関係改善を必要としている。理にかなった正しい日中関係は「安定した平和的な協力関係」の構築にあり、これが双方の長期的、広い視野に立った真の国益に資する。

日中ともに関係を改善すべき多くの理由を持つが、古き良き時代の昔の関係に戻ることは不可能である。これまでは政治問題で悪化しても良好か経済関係が、元に戻してくれた。しかし現在、軍事安全保障の新たな大きな柱が立ち、もはや経済の力だけで両国関係をあるべき姿に戻すことは難しい。
 
また日中の国力の逆転が、歴史問題を抱える隣国に位置する大国関係をさらに複雑にしている。感情的要素が入り込む余地がさらに大きくなった。
 
中国の台頭にともない、日中関係はますます日米中関係の影響を受けるようになった。米国という要素が加味され、さらに複雑となった。

日中両国首脳の大局的判断と強い意志が不可欠である。同時に国民同士の関係も重要となってきた。いかにして「等身大」の関係にするかが重要である。(八牧浩行)

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