【週末美術館】泡（バブル）の世代

中国に生まれながら、市場経済社会しか知らない世代がいる。それは「80後（バーリンホウ）」と呼ばれる、1980年代生まれの若者たち。物質的にも恵まれた鷹揚な世代。その彼らも成人し、現代中国の経済や社会を動かす存在として大きく注目され久しいが、それはアートの世界でも同様である。

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80後世代の油彩画家・張豊田（ジャン・フォンティエン）の作品は、作品としてはまとまりもよく、見栄えもよく仕上がっている。ただ、“芸術”と聞いて従来イメージするような重み―作者の渇望や痛み、苦悩、葛藤、あるいは喜び―といったものが描かれていない。繰り返しモチーフとして描かれている若い女性はアニメの登場人物のように整っているが、軽く、薄く、生身の存在感を消し去ったかのようだ。

どの女性も、無数の泡に包まれている。もろさや移ろいやすさを象徴する、うたかた。それが80後世代の執着の薄さや虚無感を表現しているのだとすれば、この重みのなさそのものが、ひとつの表現になっているのかもしれない。（文/山上仁奈）

●張豊田（ジャン・フォンティエン）

1984年生まれ。2005年に華中師範大学美術学院を卒業、2008年に同学院の修士課程を修了。中国各地や海外の美術展に積極的に出展し、油彩画家として活動している。代表作に「清明−拾遺」「溢れる」「水下人」など。

写真提供：匯泰国際文化発展有限公司（中国・天津）

※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。