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最も現代中国「らしい」風景―無味乾燥、没個性な風景―に忽然と出現する現実感のないモチーフたち。それは単調な現実から逃避したいという作者の願望を表しているのかもしれない。
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「周囲がどんなに騒ぎ立てようとも、芸術というのは常に孤独なものである。その心の内をありのままに描き出せないなら、それは成功した作品とは呼べない」。そう語る油彩画家・劉丹暉(リウ・ダンフイ)が画筆にこめるのはどんな思いなのだろうか。
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「らしさ」などまるっきり感じられない無味乾燥、没個性な風景というのは、実は現代の最も中国「らしい」風景であったりする。全国どこへ行ってもほぼ、美感も味わいもない建物が出迎えてくれることになるのだが、これが自国のバックグラウンドを簡単に脱ぎ去り、経済成長ばかりにフォーカスした結果の象徴のようであるからだ。このような風景が多くの作品のベースラインにあり、そこに、まるで現実感のないモチーフが登場する。
それは空っぽの椅子であったり、リゾート地の少年だったり、アニメの登場人物のような少女だったり。それは単調な現実から逃避したいという願望を表しているのかもしれないが、現実の風景がこれによってよりさびしげに見えるのは、「決して成し遂げられない夢」というあきらめが漂っているからかもしれない。(文/山上仁奈)
●劉丹暉(リウ・ダンフイ)
1973年生まれ、江蘇省鎮江市丹徒区出身。2000年、南京芸術学院油彩画学科卒業。現在は南京で画家として活動している。代表作に「花見」「空っぽの椅子」「白昼夢」など。
写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津)
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