【週末美術館】中国人が見た日本の春
配信日時:2011年2月6日(日) 14時50分

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【その他の写真】
塵ひとつないかのように透明で、ニュートラルで、それでいて日本への愛情と生活への愛着をたっぷり秘めた作者の観察眼がよく伝わってくる写真だ。例えば、パート先で従業員用お手洗いを使用した際、窓から覗いた野の花に目が留まり、思わずシャッターを切る。忙しい時間の隙間を縫って、心に文字通りの花が咲く。さりげない日常風景に感動を見出す異邦人の目線と、季節をめでる日本人の感性をも併せ持った朱さんの作品。日本人が見ても、特別な発見に満ちたものばかりだ。
やがて迎える「春」を主題とした作品をまとめて紹介してもらった。新しい生命の芽吹きと春の到来を喜ぶ気持ちが溢れてはいるが、なぜかとても静謐な写真たち。「春爛漫」という言葉から連想される華やかさ、豊かさ、ふくよかさ、はつらつとした気分はなく、しみじみとした味わい深い喜びにゆっくり満たされるかのようだ。それはそのまま、作者自身が抱いている、いつでも静かで穏やかな“日本の美”のイメージだそうだ。(文/山上仁奈)
●朱不二(ジューブーアル)
中国出身。本名は朱迎春(ジュー・インチュン)。2003年に留学生として来日し、比較文化学を専攻。名古屋大学卒業、文学修士。主婦として日本に残り、2008年に撮影を開始。自然や日本の美に魅了され、趣味の旅行や普段の生活の中で、日本の四季や美しい景色を撮り続けている。写真を通して日本の文化や生活、環境保護などを中国に紹介、BBSサイトで発表した作品「行撮日本」は大きな反響を呼んだ。代表作に「桜」「盛夏の記憶」「秋の恋」「暖かな冬の日」など。
写真提供:朱不二
※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。