中国が「包囲網」恐れ方針転換へ、対日政策も妥協か=米国はアジア版NATO検討―中国事情通が明かす

Record China    2010年10月27日(水) 5時13分

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25日、中国事情に詳しい林和立・国際教養大学教授は講演し、中国はアジア太平洋地域での包囲網を懸念、(1)米国との関係修復に動く(2)ASEAN諸国に対しても安心感を与える政策に転じる(3)対日政策も妥協的な姿勢をとる―などの見通しを明らかにした。

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2010年10月25日、香港英字紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」の元中国担当編集者で中国事情に詳しい林和立(ウィリー・ラム)国際教養大学教授は日本記者クラブで講演し、「中国は米国がイラク、イラン、アフガニスタンなどの整理がついたあと、関心をアジア太平洋地域に移し、中国が包囲されることを懸念している」と指摘。その上で、中国政府は(1)米国との関係修復に動いており、胡錦濤主席が来年早々に訪米する、(2)ASEAN諸国に対しても安心感を与える政策をとる、(3)対日政策もよりウィンウィンの関係を求め妥協的な姿勢をとる方向に変わっていく―などの見通しを明らかにした。発言要旨は次の通り。

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2012年の第18回全国人民代表大会(全人代)で国家主席に就くことが確実視されている習近平副主席は人民解放軍と密接な関係がある。人民軍の中で大きな勢力を持っている「党幹部の2世3世派閥」太子党の出身なので、胡錦濤主席に比べ、将軍たちの発言力が強まるとみられる。

中国共産党の立場からすれば(国民の間では)共産主義、社会主義という理念は消滅したも同然なので他の理念が求められる。ナショナリズムで国民の感情をかき立て(求心力を)確保しようとする。しかしこれは「剣の両刃」であり、デモが暴走してコントロールがきかなくなることも恐れている。今回の反日デモは中央政府への不満のはけ口となっており、「反汚職」「反不動産価格高騰」などがデモのスローガンに掲げられている。

共産党はその正統性を示すためのビジョンを国民に対し掲げる必要に迫られており、領土の保全を「核心的な利益」として持ち出してきた。南シナ海で「新たな領土問題」を言いだしたことに米国はショックを受けた。江沢民氏が「平和的な台頭」を唱え、胡錦濤氏がかつて「国際社会の中で目立つことの回避」を言っていたこととは明らかに違う。

この結果、急成長し超大国に登りつめる過程(の事象が)すべて「核心的利益」ととらえられるようになった。中国政府はこの1年、あまりに早く動き過ぎ、大きな間違いを犯した。北朝鮮が今年3月に韓国の哨戒艇を撃沈させた際、北朝鮮を非難しなかったこと、尖閣諸島問題での高圧的な姿勢やレアアース対日輸出制限や観光客の訪日中止を絡めたことも、中国にとってマイナスとなった。ノーベル平和賞に関しノルウェーに圧力をかけたことも国際的な物笑いのタネとなってしまった。中国は強大にはなったが、友人をつくるのに失敗した。

胡錦濤政権が恐れているのは、米国がイラク、イラン、アフガニスタンなどの整理がついたあと、関心をアジア太平洋地域に移すことだ。オバマ大統領はこの地域の出身であることもあって、「太平洋の大統領」と言っている。このままでは米国の反感を買うことになり、中国が「反中」で包囲されることを懸念している。米国とASEANの関係も修復され、中国封じ込めに動くのではないかとの見方もある。米国としては、日本、韓国と緊密な関係を再構築し、アジア版NATOをつくることも検討している。その場合、日本は重要な位置を占める。

中国は米国との関係修復に動いており、胡錦濤主席が来年早々に訪米する予定だ。ASEAN諸国に対しても安心感を与える政策をとるだろう。対日政策も強硬策とソフトな政策を混ぜた形になると予想する。反中封じ込め政策を回避するため、よりウィンウィンの関係を求め妥協的な姿勢をとる方向に変わっていく可能性がある。

日本と中国は経済的に密接な関係にあり、中国政府も日本の経済界との関係改善に乗り出すことになる。2008年に福田康夫首相と胡錦濤主席が交わした「戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明」は重要な取り決めであり、これを互いに確認し合うことになろう。長期的な解決策は領土問題を棚上げしてガス田などを共同開発することだ。日中間のケースは南シナ海などでの領有権問題解決のモデルとなる。

「中国の台頭」に対し、国際社会は責任あるステークホルダー(利害関係者)になるよう説得すべきだ。(大国への歩みを)ゲームのルールを守りつつ進めることが大切だ。先のG20 財務相会議で中国のIMFの議決権が引き上げられたのは、ルール遵守の結果だ。(取材・編集/HY)

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