【週末美術館】一陣の風

Record China    2010年10月3日(日) 14時57分

拡大

風の中にひらひらと舞う洗濯物。どこでも見られる日常風景だが、油彩画家・厳支勝はその中に、都市生活における心のありようを投影した。

(1 / 10 枚)

風の中にひらひらと舞う洗濯物。街中を歩くとそこかしこではためく窓際の洗濯物は中国の日常風景だが、そのきわめて当たり前の風景の中に、油彩画家・厳支勝(イエン・ジーション)は、都市生活における心のありようを投影した。

その他の写真

洗濯物の背景にひろがる街並みはモノクロームで描かれ、顔も個性もない無味乾燥なビルが連なる。中国のどこの地方都市にでもありそうな風景だ。それを作者は、「これがわたしたちの暮らす現実の世界であり、また想像上の世界であるかのようにも見える」としている。その中に確かに生きているのに、時おり襲ってくる疎外感。価値や欲望に満たされながら、時おりしのびよる逃避願望。これが現代の都市生活だ。その中で、我々は容易に自己の存在感を見失ってしまう。

そんなあやふやな精神を何とかして繋ぎとめようとしているように見えるのが、陽光にはためく洗濯物だ。ここだけが鮮やかに彩色され、生気を放っている。ほとんどが伝統的な中国服か女性の下着だが、中国服は「中国人としてのアイデンティティー」を、下着は「生身の人間としての命のうごめき」を象徴しているようにも見える。(文/山上仁奈)

●厳支勝(イエン・ジーション)

1975年、湖北省荊門市生まれ。湖北美術学院(学士)、華中師範大学(修士)卒業。現在は武漢工程大学郵便電報・情報工学部で教鞭を執るかたわら、創作活動を続けている。代表作に「一陣の風」「痕跡」「僕ら」など。

写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津

※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携