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<コラム>我家に眠る清時代の銅銭、私は小さいころに野山に投げていた

配信日時:2018年1月16日(火) 23時50分
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宮崎の実家に、なぜか多くの銅銭(穴銭)がある。筆者は小学校の時に大きな瓶にふたつ銅銭がびっしり詰まっていたのを覚えている。写真は筆者提供。

宮崎の実家に、なぜか多くの銅銭(穴銭)がある。筆者は小学校の時に大きな瓶にふたつ銅銭がびっしり詰まっていたのを覚えている。上のほうから数枚ずつ取っては、野山に投げていた記憶がある。子ども時代、骨董品の価値が分からなかったことを反省している。大半は江戸時代鋳造された寛永通宝であるが、鬼籍に入った父が、コイン帳に一枚一枚入れ、かれこれ300種類以上はある。

日本史で宋銭の輸入が鎌倉・室町時代に主に行われたことを学んだ。我家に宋・明・清の穴開き銭があることは知っていたが、蘇州に駐在するようになって、この宋銭を見ながら、どういう運命で宋(南宋時代はここ蘇州江南が繁栄の中心地)から、ここ宮崎に来たのか?想像の翼をひとり楽しんでいた。

これら宋・明・清の銅貨は渡来銭と言われ、遣唐使が中国から持ち帰ったのが始まりで、その多くは平安末期から鎌倉・室町時代にかけて、幕府や民間貿易によって輸入された。日本古来の皇朝12銭(708年和銅開珎に始まり958年乾元大寶の250年間)の鋳造停止後、寛文10年(1670年)の渡来銭使用禁止令がでるまでの期間、我が国の通貨として広く使われた。使われた銅銭は唐末の開元通寶、景徳元寶(北宋)、紹煕元寶(南宋)、永楽通寶(明)など120種類で800年に渡る。

ちなみに、大阪駅前の古銭ショップで貨幣価値を聞くと、皇朝12銭で10万円〜600万円、渡来銭で、300円〜20万円の価値があると言う。今日からでも遅くない、中国にあるあっちこっちの露天商で骨董品が売られている。偽物が多いが、お宝もあるかも知れない。

ここに「康煕(こうき)通寶」という一枚の銅銭がある(写真1)。裏には“蘇”と書いてある。このコインから筆者の探求心に火がつき、細かく調査を開始する事になった。康煕とは清時代、西暦1662年〜1722年に相当する。調査するに、清時代銅銭は全国で鋳造された。ここ蘇州もその一つで、江蘇省鋳造所が作った銅銭は「宝蘇」と呼ばれ、この鋳造所は「宝蘇局」と呼ばれた。正式名称は「宝蘇鋳銭局」で「宝」は銭を、「蘇」はもちろん江蘇と言う意味である。これが蘇州史上初めて作られた銅銭と言うことになる。

康煕7年(1668年)に設立、江蘇布政使が管理することになった。鋳造所は蘇州だけでなく、中国各地にあり、どこで鋳造したかを明確にするために、裏面右に「蘇」を左に満州語を記載した。蘇以外に廣・福・桂・河・同など多くの地方名がある。蘇州の「宝蘇局」は、石路吊橋を通りショウ門(ショウ=門構えに昌)城内を走る西中市を東に行くと中市橋に至り、その北の第24中学校付近であったようだ。蘇州新区からは31番のバスに乗ると、中街路を通り、中市橋に着く。そこが第24中学校の東隣である。学校の東に「久福里」が南北に走る。

この久福里周辺にかけて16機の鋳造所があり、月間3万斤(15トン)溶解した。この重量は個数にして28卯/年に相当と記録されている。「卯」という単位は、当時の金銭の個数の単位である。千個の銅銭が1串になる。この串を1.2万集めると1卯になる。すなわち1卯=1200万個となり、年間個数にすると、3.4億個の銅銭が造られた。

康煕通宝以外にも「雍正通宝」もあり、200年近くここで製造されていたことになる。久福里に行っても、ここに清時代「宝蘇局」があって銅銭を造っていたなど一切の掲示物がないが、人通りのない寂しい路地に古めかしい建屋を見るばかりである。たかが銅銭1枚であるが、どういう経緯で日向宮崎まで来たか、そしてなぜ造られた場所を訪問したいと思ったのか、これが「金の縁」と言うものであろうか。

■筆者プロフィール:工藤 和直
1953年、宮崎市生まれ。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、日中友好にも貢献してきた。

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