<コラム>日本人の感覚ではとてもやっていけない、中国のカオスな宅配便事情

大串 富史    2018年1月15日(月) 18時30分

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2017年の「双11節」つまり11月11日「独身の日」恒例のセールは、まさにジャストタイミングだった。写真は中国の宅配業者。

2017年の「双11節」つまり11月11日「独身の日」恒例のセールは、まさにジャストタイミングだった。なぜなら9月に中国に帰って来て、拠所(よんどころ)ない事情で2カ月余り待たされた末、11月になってやっと新居に落ち着いたからだ。ようやくここ新天地で新生活を始めるにあたり、かなりのものをゼロから買い揃えなければならない。

それで中国ネットショップの雄であるタオバオを行きめぐり、必要なものを買いあさる。結果、合計で4000元余り(日本円にして約7万円)を費やした。166Lの冷蔵庫や7.5キロ対応の洗濯機やキャノンの複合機や炊飯器や電磁調理器や食器等すべてを含めてだから、それなりのお得感を実感している。とはいえ、全く問題がないわけではない。

問題の1つは偽ブランド品だ。「タオバオ:偽ブランド品が横行、変革は急務!」と題するニュース報道によると、政府の調査が入った結果、最高で63%が偽ブランド品だったという。

もっとも、これはそれほど驚くにはあたらない。ごく大雑把に言ってしまうと、中国で流通している約3分の1はいわゆる正規品で、値段がそれなりにする。さらに3分の1がB級品で、なんちゃって正規品、つまりコピーないしは類似品であるものの、それなりに安くてそこそこ使える。残りの3分の1は正直使えない、または額面通りの価値がない、あるいは正真正銘の粗悪品で、後述するように今回僕も幾つかつかまされてしまった。

2番目の問題は物流や検品のいい加減さにある。人口が日本の10倍だから、単純計算で10倍ないしはそれに準じた物流や検品が必要なため、正直何事も追い付いていないように見える。

たとえば今回購入した電熱ヒーターは、箱から開けてみたらプラスチックの部分がことごとく割れていた。クレームを上げたところ、すぐ取り換えましょうとあっさり。「この程度のことはもうお互いに慣れっこでしょう?」とでも言わんばかりだ。電子式の計りは液晶がつくのに数字がゼロのままで動かない。連絡するとショップいわく、もう1台買って「新品」を手に入れ、同時にこの不良品を受け取った品物の代わりに送り返してくれとのこと。その際に1元(日本円で17円ほど)に満たない保険に加入すれば返品の送料を保険会社が肩代わりしてくれるからと、こちらが思わず笑ってしまう裏技を聞かされる。

とはいえ、中国では笑い話では済まないことも時に起こり得る。それは3番目の問題、つまり驚愕の宅配便事情による。簡単に言えば、日本ほどには信用できないのだ。

たとえば、送ったまたは送られたはずの荷物が届かない。実例を挙げると2カ月前に宅配便で北京の友人のところに日本の政府機関に提出すべき書類等を送ったところ、いつまでたっても届かない。宅配便のクレーム窓口に何度問い合わせをしても、「ではこれから処理します」の一点張りでらちが明かない。そうこうしているうちに1カ月が過ぎてしまったので、拠所なく中国政府直轄の郵政機構に案件を「提訴」する。ここ中国では郵政機構がすべての物流を監督していて、ここに提訴すると政府の調査が入るのだ。それで結局、最初に荷物を受け取った宅配便のお兄さんが先日になってやっと賠償金を払ってくれた。

別の日、返品すべき品物を午前中に宅配便が取りに来るとのことだったが、待てど暮らせど取りに来ない。やがて昼食の時間となり中国人の妻が思い出したように言う。「そういえば宅配便から、荷物の引き渡しを『拒否された』からもう取りに来ないってメールがあったわ」。ちょっと待て。それはないだろうと連絡を入れて、驚愕した。「いや荷物多過ぎで今日は取りに行けそうもなかったんで、(こちら都合で)キャンセルさせてもらった」。あまりのあからさまな物言いに、こちらとしても笑いながら「いやそんなことではこちらとしてもクレームを上げなきゃいけなくなるから、とにかく早く取りに来てよ」と強く促す。

僕が携帯を切ると、妻が言った。「この子が昨日300元(の賠償金。日本円で約5000円)を払ってくれた例の子なのよ」。しばし考えてから僕も真顔で妻に言う、「もし取りに来なかったら、もう連絡せずに別の宅配便の業者を探して送ろう」。送った品物がまたしてもなくなったら、という不安が頭をよぎったからだ。

中国の巷では「双11節」絡みの悲喜こもごもな報道があふれており、それだけでもうすでにカオスなのだが、それに宅配便絡みのカオスが加わるのだから、ここ中国で日本人の感覚のままではとてもやっていけない。

例の宅配便のお兄さんについて言えば、翌日になってちゃんと荷物を取りに来てくれたものの、ちゃんと届くかどうかは僕も、そして恐らくは誰も知らない。それでもタオバオのお届けアラートだけはちゃんと動作して僕に告げる、『お届けの品物は配送中で、配送員は―』。なんだ、また君か。ところで、一体いくつの宅配便を掛け持ちしてるんだ君は?

後日、必要が生じて32インチの液晶テレビを買ったのだが、テレビ本体のAndroidに一番必要だったマルチメディア総合辞書系アプリをインストールすることができ、しかもChromeまでインストールできたので友人たちとよく訪れるサイトなども見れ、ただただ驚いている。値段は900元弱(日本円で約1万5千円)だったので、もっさり感があるもののお得感の方がかなり強い。業者から「かならず宅配便の配達員と液晶の割れがないかどうかを確かめてください」と言われていたが何事もなかった。思うに上述のカオスは特定の状況下で特定の人物が関わると起きるのかもしれない。双11節とは、そんな特定の状況を生み出しやすいのだろう。ちなみに例の彼は、理由は定かでないが最近見かけない。

■筆者プロフィール:大串富史

本業はITなんでも屋なフリーライター。各種メディアでゴーストライターをするかたわら、中国・北京に8年間滞在。中国人の妻の助けと支えのもと新HSK6級を取得後は、共にネット留学を旨とする「長城中国語」にて中国語また日本語を教えつつ日中中日翻訳にもたずさわる。中国・中国人・中国語学習・中国ビジネスの真相を日本に紹介するコラムを執筆中。

■筆者プロフィール:大串 富史

本業はITなんでも屋なフリーライター。各種メディアでゴーストライターをするかたわら、中国・北京に8年間、中国・青島に3年間滞在。中国人の妻の助けと支えのもと新HSK6級を取得後は、共にネット留学を旨とする「長城中国語」にて中国語また日本語を教えつつ日中中日翻訳にもたずさわる。中国・中国人・中国語学習・中国ビジネスの真相を日本に紹介するコラムを執筆中。

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