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中国・江南地方の伝統的民家群をファインダーに収めた写真家・姫虎。とはいっても、作中ではその建物の一部のみを切り取っており、ほとんど抽象的と言ってもいい。来訪者を拒む生活者たちの息づかいが、かすかに感じられるばかり…そんな閉塞的な空間を想起させる。
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「粉墻黛瓦」―漆喰の白壁に青みがかった黒い瓦―これは、中国の江南地方に残る伝統的民家を形容する際によく使われる言い回しである。白と黒という抑制的な色彩、主に直線のみで描かれる輪郭線、控え目で上品なたたずまいは、周囲の自然風景と実によく調和している。
【その他の写真】
報道カメラマン出身の写真家で、中国各地で生活に密着した風景をテーマに撮影活動を続ける姫虎(ジーフー)は、「江西民居小品」と題された連作の中で、江西省を舞台にこうした民家群を収めている。
とはいっても、作中ではその建物の全体像を目にすることはできない。窓を中心とした一部のみを切り取った画面はコンポジション作品のようで、ほとんど抽象的と言ってもいい。梁や雨戸によって半ば遮られた小さな窓の内側の空間は、おそらく日中も薄暗く沈みかえっており、耳を澄ませてやっとのこと、生活者たちのかすかな息づかいが感じられ、しかも彼らは来訪者の我々を拒んでいる…そんな閉塞的な空間を想起させる。(文/山上仁奈)
●姫虎(ジーフー)
中国の写真家。1969年生まれ。山東師範大学中国言語文学学科卒。報道カメラマンを経て、1995年より山東斉魯テレビに勤める。「茶不多」の名でも活動。生活の中の何気ないひとコマをカメラで伝えている。代表作に「江西民居小品」「長方形の中の北京2008」「欧州の窓」など。
※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。