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クライマーであり、フォトグラファーであり、コラムニストでもある紫笛依揚は、過酷な自然に挑むクライマーたちの姿をファインダーに収める。しかし、同時に「自然界の中の人間とは、所詮ちっぽけな存在」と達観している―そんな姿勢をうかがわせている。
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クライマーであり、フォトグラファーであり、コラムニストでもある紫笛依揚(ズーディーイーヤン)は、中国のアウトドア界ではちょっとした有名人である。華奢ではかなげな風情の若き女性アーティストだが、その外見からは想像もつかないようなバイタリティーで各地の厳しい自然に対峙し、その記録をファインダーに収めている。
【その他の写真】
人里離れた過酷な自然を題材とする写真家は決して少なくはない。しかし、彼女の作品群「山、岩、氷」が捉えているのは自然そのものではなく、それに挑むクライマーたちの姿だ。彼らは必ずしも画面の中心にはおらず、時には目をこらさないとその存在には目がとまらないほどという作品もある。したがって、危険を隣り合わせにしながら必死に絶壁にしがみつく彼らの張り詰めた筋肉も、にじみ出る汗も映してはいない。
一貫してクライミングに魅せられている紫笛依揚であるが、それは自然に挑戦し、それを克服せんとしているのではなく、どこかで「自然界の中の人間とは、所詮ちっぽけな存在」と達観している―そんな姿勢をうかがわせる作品である。(文/山上仁奈)
●紫笛依揚(ズーディーイーヤン)
中国のクライマー、フォトグラファー、コラムニスト。中国のアウトドア界では知られた存在で、写真、旅行、アウトドア、クライミングをテーマとした自身のブログは開設3年で45万ページビューを誇る。07年には中国アウトドアデータサイトの特派記者として新疆の登山隊に同行し、エベレストに2か月滞在。標高5800メートルでのアイスクライミングを記録した写真作品「アイスクライミング in エベレスト」は2007年度中国アウトドア金犀牛賞でアウトドア写真最優秀賞を受賞した。代表作に「山、岩、氷」「魅力新疆」「道の途中で、エジプトで」など。
※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。