【週末美術館】hero ―失われた英雄―

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女性らしい繊細さとやさしさが同居する作風の中に、痛々しく、悲しげな英雄の姿を描き出す女流油彩画家・張春迎。エゴと利己主義が渦巻く現代が永遠に失ってしまった“英雄”の理想像を、彼女はどのように解釈し、どのように描き出すのか?

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絵筆の走った軌跡が感じられないほど均一に、丹念に塗りあげられたデリケートなキャンバス。ピンクや黄色を帯びた優しい灰色。しかし、女性らしい繊細さとやさしさが同居する中に展開する世界は痛々しく、悲しげなものだ。

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女流油彩画家・張春迎(ジャン・チュンイン)が「hero(英雄)」と題して描いたシリーズが、これほどまでに寒々しい理由を、美術評論家でキュレーターの盛蔵(ション・ザン)氏は1)灰色基調の色彩2)断片的な構図3)バラバラのモチーフ−−としている。脈絡なく繰り返し登場する椅子や電気コード、スコップ、椅子、仏塔、涅槃像、切断された手足。こうした陰鬱な内的世界の独白というのは、若手現代美術家たちにありがちなスタイルで、ともすればひとりよがりとなってしまう。ただ、張春迎がこの連作に込めたのは、私的な感性以上に、現代人の多くが求める理想像なのだと盛氏は語る。

自分自身にのみ意識がフォーカスしている現代人。このエゴと利己主義の時代において、“英雄”というものは、もはや映画や小説の中だけの存在になってしまった。永遠に失われた理想や夢。だからこそ、現代人は逆説的に英雄の存在を求め、そこに慰めを見出す。張春迎が描く英雄は神話上の人物でもなければ勇ましい革命家でもない。年齢も性別も身分も不明の存在である。英雄がどんな姿をしているのか、どんな人物像なのか、回答は示されていない。(文/山上仁奈)

●張春迎(ジャン・チュンイン)

中国の女流油彩画家。1980年生まれ、山東省出身。2002年に山東芸術学院(学士)、2006年に天津美術学院(修士)をそれぞれ卒業。2006年より北京に居を構え、創作活動を続けている。代表作に「hero」「Lost」「what happen」など。

写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津)

※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。



   

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