【週末美術館】わたしの衣服

絵画・写真・映像・インスタレーションなど多角的な創作活動を展開するアーティスト・張[金孟]（ジャン・モン）。現代の家庭を「密閉されたプライベート空間」と定義づけたインスタレーション作品「家庭box」に代表されるように、時代の空気を的確にとらえた作品で高い評価を博している。

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日常生活に材をとるその手法が結晶した連作が、もうひとつある。「わたしの衣服(我的衣服)」と題されたその作品群は、乱雑に脱ぎ重ねられたかのような衣服のクローズ・アップを描く。タイトルを知らなければ、それが衣服なのかどうかすら判別できないほど表現は抽象化しているが、目を凝らせば袖口のボタンやポケットのようなものも目にすることができる。抽象的でありながら、その布のうねりやくたびれた皺から、つい今しがたまでこの衣服を着ていた持ち主の体温やにおいまでをも想起することができる。衣服という変哲のない物体に、個人の肉体を内包するきわめて私的な空間を見出す瞬間である。（文/山上仁奈）

●張[金孟]（ジャン・モン）

中国のアーティスト。1972年生まれ。天津美術学院版画学部卒業。現在は同学院デジタルメディア芸術学部で教鞭を執るかたわら、天津を拠点に創作活動を展開している。代表作に「私の枝（我的樹枝）」「私の服（我的衣服）」「家庭box」など。

写真提供：匯泰国際文化発展有限公司（中国・天津）

※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。