【週末美術館】円 ―繰り返す叙事―

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物語を説明する古典的な連続画に、新たな意味合いを塗り重ねた若き画家・曽揚。彼は連続画に具体的なストーリーではなく、自身のあらゆる感覚や思想の断片をもりこみ、ひとつの立面図として構成した。それは終わりなく循環する精神世界の叙事作品であるといえる。

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円形の絵画、というと物珍しく思われがちだが、実は決してそのようなことはない。16世紀のオランダで発展したフランドル絵画ではよく見られるもので、円形の画面を複数に区切り、連続画で寓話を語る手法がよくとられた。「美術」というものはかつてこのように、宗教の教義や寓話・物語を説明するために存在するものであった。現代美術の歩みは、そこから脱却を図り、純粋な表現芸術を抽出することにあった。

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さて、円形の連続画を現代に再現させた若い画家がいる。曽揚(ズン・ヤン)は、円形画面に上下左右の異なる空間をらせん状に展開させた連作「円(原題:圓)」で、この使い古された絵画形式に新たな意味合いを塗り重ねた。曽は連続画に具体的なストーリーを刻むのではなく、自身のあらゆる感覚や思想の断片をもりこみ、ひとつの立面図として構成したのである。

そこには人間社会における秩序と構造の全体像が描かれている。連続画には始点も終点も定められておらず、それは鑑賞者が自由に決める。定めた始点の場所により、その作品はさまざまな印象や解釈を与え、いかようにも変化する。いつまでも循環するその連続画は、作者の精神世界の果てなき叙事作品であるといえる。(文/山上仁奈)

●曽揚(ズン・ヤン)

中国の画家。1981年生まれ、雲南省昆明市出身。2005年北京吉利大学現代芸術学院卒。卒業後も北京に残り、アーティスト活動を続ける。代表作に「円」「計画未遂」「なおざりな瞬間」など。

写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津

※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。



   

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