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いつの時代もなくなることはない、性をテーマとした芸術。自身の欲望や妄想をひっそりと暗示する曽科の作品は、大胆にクローズアップした花卉を描くことで、見る者にさまざまな官能を連想させる。
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性をテーマとした芸術というものは、いつの時代もなくなることはない。若き油彩画家の曽科(ズン・コー)も例外ではない。後天的に認識される社会通念や常識感覚によって、多くの人間が意識の表層から本能を覆い隠してしまう中、性に関する欲望や妄想を作品に昇華させ、ひっそりと見る者に暗示する。それが曽の描く花卉の連作に表れている。
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複雑に入り組んだ曲線や立体感を持つ花卉に大胆にクローズアップし、その全体像というよりも核心の部分だけを取り出して描いたその作品群は無論、花そのものの優美さを表現するにとどまらない。作品を見る多くの者は曽の絵画を見てずばり、生殖器官を連想するだろう。幾重にも折り重なるバラの花弁の奥に潜む官能。カラーの花から滴る水滴は、こぼれ落ちる情欲のようだ。それらは、70〜80年代のアメリカ美術界をスキャンダラスに駆け抜けた夭折の写真家ロバート・メイプルソープの作品を想起させる。
この花卉の連作を見る時、誰の意識の奥にもひっそりと眠る秘密の花園の鍵が、そっと開けられるかのような悦びと不安が交錯するのである。(文/山上仁奈)
●曽科(ズン・コー)
1982年、重慶生まれ。油彩画家。四川省芸術学校で美術を学ぶ。著名画家の黄小玲、杜永樵に師事。四川美術学院で油彩画を専攻し、2005年に卒業。以降、重慶を拠点に活動している。代表作に「藍魔」「チャタレイ夫人」「廃れた工場」など。
写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津)
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