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中国の三峡ダム建設に伴って、愛する故郷からの立ち退きを命じられた市井の女性が、力強く、誇り高く「ノー」と言い続ける7年間のドラマが、ドキュメンタリー映画「長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語」としてまもなく公開される。
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北京五輪と並ぶ中国の大いなる夢、それが2009年の今年、ついに実現しようとしている。重慶市から湖北省にかけて広がる世界最大級の三峡ダムが完成することにより、中国では電力の供給や水運が飛躍的に改善されることとなる。しかし、その国家の夢の裏には大きな犠牲が伴った。19の市と県が水底に沈み、140万人の住民が故郷を去ったのである。
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そんな過酷な現実に屈することなく、移住命令に「ノー」と言い続けた女性がいる。有名でもなく、裕福でもなく、学もないその女性は、自らの尊厳を貫くことを決してやめようとはしなかった。その姿を7年にも渡って撮り続けたドキュメンタリー映画が、「長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語」である。
長江のほとりで暮らす女性・秉愛(ビンアイ)は、つつましいながらも夫や子供に囲まれ、平和に満ち足りた毎日を過ごしていた。そのささやかな幸せに暗雲をもたらしたのは、国家プロジェクト・三峡ダム建設に伴う移住の通達。貧しい農民の秉愛だが、国家の都合で自分の生き方を変えることはできないと、頑として応じない。そんな彼女を何とか説得しようとする役人らは、アメと鞭を使い分けながら執拗に退去を迫るのだが……。
平凡な一市民の秉愛だが、生活に根ざした確固たる哲学を持ち、誇り高く生きることを忘れず、愛する家族を守るためにどこまでも強くなり、しかし、どこかほろりと女性の繊細さや弱さを見せる。そんな人間的魅力に溢れた彼女に惚れこみ、数年にわたって見つめ続けてきたフォン・イェン(馮艶)監督は、女性ながらにほぼ単独で撮影を敢行。本作は08年のナント三大陸映画祭銀の気球賞(準グランプリ)などを受賞した。同じくダムに水没する運命の街を描き、06年のベネチア映画祭グランプリ(金獅子賞)を獲得した「長江哀歌(エレジー)」のジャ・ジャンクー(賈樟柯)監督も、「ただの三峡についての映画ではない。急速な変化を背景とした、中国人の精神の歴史そのものだ」と、惜しみない絶賛を送っている。
映画「長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語」は2月下旬より東京など全国で順次公開。(編集/愛玉)
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