【週末美術館】不感症の現代っ子が描く、確立された自我

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引きこもりで無感動―典型的な現代っ子を自認する新進水墨画家・劉[王奇]は、無気力で平淡な日々を送りながら、それでもしっかりと自己の模索を続ける作家である。西欧的な色使いにポップ・アートのような軽さを出した画風の中にも、サラリと独自性を匂わせる。

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日々の感動もない。未来も見えない―そんな現代っ子が、ついに中国アート界にも登場した。学生生活を終えてわずか3年の新進水墨画家・劉[王奇](リウ・チー)。生活の大部分が自宅に閉じこもり、ほとんど人に会わず、ネットに興じたりDVDを見たりしているという典型的現代っ子の劉は、自身の生活を自給自足ならぬ「自閉自足」と形容しており、毎日が瞑想と「自分探し」の連続だという。いささか心許ない印象だが、そこはやはり現代っ子、「個性」へのこだわりは非常に強いようである。

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現代水墨画における全ての表現技巧を試した結果は「没個性」と断定した劉。自分なりの造型手法を確立することは、作品の品格や含蓄を決定することだという。それには新奇さばかり求めてもならない。自身の文化の根源を見つめなおすことにも、ヒントが隠されていると確信している。時間と空間によってよく精錬された“伝統文化”は、想像以上に豊かな厚みを持っているからだ。

こうして形成された劉の作品世界はなるほど、引きこもりがちな寡黙な青年の姿が見えるようである。灰色を帯びたパステルカラーの色使いはおおよそ西欧的で、中国の伝統色とはかけ離れているし、筆跡を感じさせない扁平なマッス(量塊)はさながらポップ・アートのようだ。その中に、仏画に登場する仏掌などのモチーフがさりげなく散りばめられており、軽やかな画風の中にサラリと独自性を匂わせている。(文/山上仁奈)

●劉[王奇](リウ・チー)

中国の水墨画家。1979年、山東省博山生まれ。2001年、山東芸術学院・美術教育学部卒業。2002年に大学院に入学、水墨人物画を専攻し、2005年に修士課程を修了。卒業と同時に同学院の中国画学部で教鞭を執り、現在に至る。

写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津

※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。



   

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