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若者らしいみずみずしい感性で、青春期独特の孤独、挫折、不安、迷い、ゆらぎ…といった心象を画面いっぱいにあぶり出す水墨画家、トゥー・シャオフイ。美しくも明るくもない、ほの暗い青春の現実を、無彩色の幻想的な世界の中に構築する。
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次代の中国国画(水墨画)界を担う若き水墨画家・[シ余]少輝(トゥー・シャオフイ)の、ここ2〜3年の成熟ぶりには目を見張るものがある。若者らしいみずみずしい感性で、青春期独特の孤独、挫折、不安、迷い、ゆらぎ…といった心象を画面いっぱいにあぶり出す。
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20代の終わりを迎えた06年あたりから、非常にパーソナルな情緒を描きはじめる。自己の生命の軌跡を追体験しながら、見る者の琴線を刺激するような作品が次々と生まれ出した。風の吹くままに揺らぐような頼りなげな若者の心理が、街灯、木陰、カゲロウ、落ちた凧、捨てられた自転車などといったモチーフに投影されている。
無彩色の墨だけがにじんで広がり、像を結び、まるで夢の中のような、蜃気楼のようなはかなげな世界をつくりあげる。どこにも実体がなく、どこにも着地できないようなはかなさ。不安定な世界。しかしこれこそが、等身大の青春の姿なのではないだろうか?美しくも明るくもない、ほの暗い青春の現実が、彼の作品には描かれている。(文/山上仁奈)
●[シ余]少輝(トゥー・シャオフイ)
中国の水墨画家。1977年生まれ、新疆ウイグル自治区出身。新疆芸術学院・中国画学部卒業。2000年から同学院で教鞭を執る。2005年に中国の美術大学最高峰・中央美術学院の中国画学院で働き、2007年には同学院の院生となる。
写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津)
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