【週末美術館】写実×ポップ・アート×水墨の妙

Record China    2009年1月10日(土) 15時39分

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アニメ的描画など、時代の空気を読んだ新しい表現技法を器用に軽々と伝統的水墨画の世界と結びつけた70年代生まれの画家・熊明非。中国で「70後」と定義される世代特有の環境適応能力が存分に生かされた独特の表現言語が魅力の作家である。

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アニメ的な表現様式に多大な影響を受けながら、高いデッサン力を示すリアルな描画法を共存させ、「写実的ポップ・アート」とも言うべき絵画を展開する熊明非(シオン・ミンフェイ)は、驚くべきことに「水墨画家」の肩書きを持つアーティストである。

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73年生まれで若干35歳の熊明非は、中国では「70後(70年代生まれ)」と定義される世代に属しており、その作品世界を構成する要素に、少なからずもこの世代の特徴を匂わせている。消費社会や市場経済社会の申し子である「70後」は、それまでの共産主義的革命思想の呪縛から完全に自由であり、時代の変化に揉まれて培われた卓越した環境適応能力を持ち、新し物好きで反逆的、ワーカホリックな側面を持つ。熊明非はまさに絵画史の時空を自在に往来し、伝統的水墨画の世界と時代の空気を読んだアニメ的手法を器用に結びつけた、象徴的な「70後」作家と言えよう。

河北大学芸術学院美術科の馬琳(マー・リン)副教授は、そんな熊の作品世界を統括して、「個人的な興味の対象をビジュアル性の高い水墨画に投影している。かつては伝統の世界と距離をとるため、現代的観念やトレンドをダイレクトに組み入れ、その方法のひとつとしてアニメ的な技巧も取り入れたが、近作ではこれらを融合させ、ついにオリジナルな表現言語を身につけた」としている。

熊自身は自身の創作について、最大のキーポイントを「ミニマル」という概念に一括している。モチーフ、素材、色彩、技法などの一切を取捨選択し、整理することによって構成要素を必要最小限へ圧縮する。その「そぎ落とし作業」が作品世界をより豊かなフェーズに導き、さらに、最もシンプルかつベーシック、直接的で効果的な技巧を精錬することになったという。

「鳥」と題された連作は、モチーフから陰影やテクスチャーをほぼ取り払い、アウトラインだけで的確な立体感や量感を生み出すというきわめて東洋絵画的な技法を用い、全体を沈んだにび色でまとめあげながら、一見した印象は「水墨画」ではなく、まさしく現代アートといった風情を醸す熊らしい作品である。鳥の頭部のみに鮮やかな色彩とハイライトを施し、質感までを細密に描きあげ、それがあたかも合成写真のような効果を出している。ユーモラスでシニカルなポップ・アートのごときインパクトと軽やかさを含んだ秀作だ。(翻訳・編集/山上仁奈)

●熊明非(シオン・ミンフェイ)

中国の現代画家。1973年生まれ、湖北省武漢市出身。湖北美術学院中国画学部卒業。04年に修士課程を修了、同学院中国画学部で教職に就き、現在に至る。伝統的水墨画の世界とアニメ的手法を器用に結びつけたポップな作風で独自の世界観を作り上げている。代表作に、目の大きなサルをテーマにした「手の中の花」「心の火」などの一連の作品や、シンプルな線とわずかな色で描いた連作「鳥」などがある。

※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。

写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津

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