【週末美術館】卓越した芸術家の描く「童画」

Record China    2008年12月20日(土) 15時29分

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天衣無縫な童画のような作風の中に、一抹の憂鬱を漂わせる水墨画家の武芸。国内外で人気を呼ぶ一方で富や名声を顧みず、「画壇随一の非物質主義者」とも形容されるその作品の裏には、常に高みを追究する厳しさと、自己の魂に向き合う痛みが潜んでいる。

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鷹揚で天衣無縫な人物像をその作品からみなぎらせている水墨画家の武芸(ウー・イー)を、美術評論家の郭暁川(グオ・シアオチュアン)は「画壇随一の非物質主義者」と形容する。思いのままに創作すること以外に興味を示さず、富や名声を顧みない。その世俗離れした風体が、作家としての品格を呼び寄せている感がある。

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前出の美術評論家で、美術誌「今日中国美術」編集長の郭氏によると、“もし、その卓越したデッサン力を生かし、写実絵画の道を歩んでいれば、いまや巨万の富と華々しい地位を築いていたに違いない”武芸の作品は、時間概念も空間概念も、光すらも失われた世界の中にたたずむ、波ひとつ立たない泉のようである。一切が静止したその中に永遠が生まれ、悟りの世界が広がるようだ。単純明快、ありのまま、随意で散漫、まるで童画のような作品群はその実、的確な筆致で構成され、心に染み渡るような清廉さがあり、これが武芸の一貫した作風となっている。一見して無邪気で明朗な作品世界だが、それらは常に高みを追究する厳しさと、自己の魂に向き合う痛みから生み出されたものなのである。

美術評論家で清華大学美術学院副教授の張敢(ジャン・ガン)氏も同様に述べている。「(国内外で人気作家となった彼を指して)『彼は賢い芸術家だ』と人は言うが、その裏には武芸が誠実に創作に向き合う姿が隠されている。彼の作品に一見される楽しげな印象の中には、似つかわしくないような一抹の憂鬱が漂っている。それは彼自身の心の奥底から自然と溢れ出した心象風景だ」。

失われた過去を描いたのだろうか、あるいは農村部をモチーフとしたのか、旧式の綿入れの衣服や人民服に身を包んだ労働者を描いた武芸の作品群がある。近年の中国では伝統的なフォーク・アートである「農民画」に一躍注目が集まっており、農民自身が拙いながらも、農村生活の四季を生き生きと描いて人気を呼んでいるが、武芸のこの作品群には、それと同質の魅力が潜んでいるように思われる。市井の情景を無邪気な暖かい目線で包み込んだ愛すべき作品群だが、全体に灰色がかった煙たい色彩が寂しげな一方、積極的に取り入れられた余白の美しさが洗練を生んでおり、やはり農民画とは一線を画した、芸術作品としての魅力を放っている。(文/山上仁奈)

●武芸(ウー・イー)

中国の現代水墨画家。1966年生まれ、吉林省長春市出身。中央美術学院国画学部卒業。魯迅美術学院で教職に就いた後、1991年から中央美術学院で研究生として著名画家の盧沈に師事。現在は同学院壁画学部で講師を務める。武芸の作品は伝統的な水墨画に現代要素を取り入れた「都市水墨」や「実験水墨」にしばしばカテゴライズされるが、農民や労働者をモチーフにした作品も多く、確かなデッサン力には定評がある。

※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。

写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津

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