【週末美術館】生育 ―都市水墨のアイコン―

Record China    2008年12月6日(土) 17時49分

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日常生活から離脱した水墨画の世界を現代生活にリンクさせたアーティスト・劉慶和は、中国水墨画界のアイコンにまで上り詰めた「都市水墨」の作家である。的確なデッサンと大胆な省略、無駄のない繊細な筆運びが、洗練された清廉な画風でリアルな人物を描き出す。

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現代水墨画界を代表するアーティスト・劉慶和(リウ・チンホー)は、日常生活の真実から遠く離脱していた水墨画の世界を現代生活に積極的にリンクさせたパイオニアである。90年代初頭に画壇に登場して以来、水墨における人物画を追究し、その作品は「都市水墨」などとも形容され、中国水墨画界のアイコンにまで上り詰めた。

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ある評論家はその劉慶和の作品世界を「3つの美」で表現している。1つめは「和」の美。平常心で日常を直視し、誰にも見向きもされないような忘れ去られた者に目を留め、描き出す。鑑賞者はその鋭い着目眼に心打たれながら、同時に親近感をも感じる。2つめは「衝」の美。作家の内に秘められた確かな自信、信念が作品から自ずから突き抜けてくるようである。確固たる自信を秘めているからこそ、劉慶和は寡黙なのである。ひけらかし、誇示する必然性がないからである。3つめは「淡」の美。無欲で飾り気がなく、世俗に媚びない品格。老子の言葉「信言不美(信言は美ならず=信じるに値する言葉は聞こえのよいものではない)」を体現するが如くである。都市の日常に潜む物語を物静かに、とつとつとした語り口で投げかけるその作品群は、われわれにいとも親しげに寄り添ってくる。

幼児を描いた連作「成育」は、画面の中にちんまりと行儀よく収まった人物と、広く取られた清廉な余白が洒脱で現代的な空気を醸す作品だ。顔や手足など露出している部分は立体的に、リアルに、皮膚感たっぷりに描かれ、衣服に包まれた部分はまるでイラストの如く、平面的に、最小限の線画で大胆に省略されている。デッサンが的確なため立体感は失わず、かといってポップ・アートのようなミニマルな洗練も共存している。また、一手も無駄のない繊細な筆運びは適所に「塗り残し」をつくり、それがハイライトとなっている。描かれる幼児らはわずかにしかめ面をしているか、あるいは感情を宿していない。茫然自失としているようでいて、感情を爆発させる寸前のような緊張もある。物言わぬ幼児らの表情から情動を感じ取ろうとする作者のストイックな目線と、抑制に徹した描画が存在感のあるリアルさを生んでいる。(文/山上仁奈)

●劉慶和(リウ・チンホー)

中国の現代水墨画家。1961年生まれ、天津出身。中央美術学院中国画学部卒業。現在、同学院同学部で副教授を務める。伝統的な水墨画に現代要素を取り入れた新世代の現代水墨画家のひとりで、日常生活の真実から遠く離脱していた水墨画の世界を現代生活に積極的にリンクさせたパイオニアである。作品は人物を描いたものが多く、「都市水墨」とも呼ばれている。

※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。

写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津)



   

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