この秋読みたい中国本その2『巨竜のかたち』

配信日時:2008年9月8日(月) 10時32分
この秋読みたい中国本その2『巨竜のかたち』
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Record China読書推進協議会では、中国を知るために、この秋ぜひ読みたい中国本を紹介する。その第二回は、『巨竜のかたち』(信太謙三著、時事通信社刊)だ。同氏は、9月27日(土) 東洋証券で「『世界のエンジン』中国が世界を引き寄せる」というテーマで講演を行う予定。
Record China読書推進協議会では、中国を知るために、ぜひ読みたい中国本を定期的に紹介。その第二回は、読書シーズンの秋にぴったりの『巨竜のかたち』(信太謙三著、時事通信社刊)だ。

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現代中国の俯瞰図がもたらしてくれる爽快感

「象とは太い綱のようなものだ」「いやいや、太くて丸い柱のようなものだ」―。これは、ご存知“群盲象を撫でる”の寓話である。鼻や脚、尻尾など、象の一部分だけを撫でた盲人たちがめいめい勝手に象の全体像を決めつけるという話で、全体あるいは大局を見る視点が欠落していることのたとえによく使われる。

寓話の「象」を「中国」に置き換えてみよう。すると、自信をもって「中国」の全体像を語れる人など、滅多にいるものではないことにあらためて気づかされる。それほど現代中国は多面的で、見る角度や触れる対象によって印象が大きく異なってくる。外貨保有高世界一の国という側面があるかと思えば、貧富の格差は手のつけようのないところまできているという印象も拭えない。汚職天国、偽モノ天国であると同時に、世界最大の消費市場に成長しつつあるという面もある。プロレタリア独裁を国是として掲げながらも、資本主義国顔負けのコマーシャリズムが跋扈している。

インターネット利用者が2億5000万人に達していてメディアも百花繚乱の趣だが、いわゆるジャーナリズムは無きに等しい…。
本書は、このように多面的で変化の速い現代中国の捉え難い全体像の輪郭を、敢えて描き出そうとする試みである。しかし、今の中国をかくあらしめているのは“甦る大中華の遺伝子”(本書のサブタイトル)のはたらきであるという著者の洞察に発したこの試みは見事に成功しているといってもいいだろう。他のチャイナウォッチャーと呼ばれる方々のいかなる言説よりも、「象」ならぬ「竜」の輪郭をくっきりと浮かび上がらせてくれるからである。そういう意味で、著者の自負と気概も伝わってくる「巨竜のかたち」というタイトルは、けっして大げさなものには感じられない。

おそらく多くの読者は、これまで獲得してきた自らの中国観にかなりの修正を迫られることになるだろう。そういえば、チャン・イーモウ(張芸謀)監督が演出した北京五輪開幕式の壮大なスペクタクルによって「中国観が変わった」という向きもあるようだ。しかしそれは、あたかも象の鼻を撫でていた手がたまたま脚にも触れたような経験に基づく捉え方の変化であって、全体像を把握した上の変化や修正ではない。しかし本書の読者は、さまざまな事象を実にバランスよく取り上げる著者によって―この見事なバランスは本書の大きな特徴でもある―、現代中国の輪郭を自らの脳裏に描き出すことができる。こうした内発的な経験こそ、ものの見方や考え方を根本から修正する契機になる。

しかもそれは内発的であるだけに、「目から鱗」といってもいいような爽快感を伴うのである。私たちは都市や建造物などの俯瞰図(あるいは鳥瞰図)を目にした際にある種の爽快さを感じることがあるが、それに近いかもしれない。そういう意味で本書は、現代中国の立派な俯瞰図になっているといっても過言ではない。ビジネスであろうとアカデミズムやスポーツ、政治であろうと、中国と関わる多くの方々に、この爽快感をぜひ味わってもらいたいと思う。少なくとも私のような群盲に属する者には得るところの大きい一冊だった。

著者は現在大学で教鞭を執っているが、以前は“ボーン・上田記念国際記者賞”を受賞したほどの実力派ジャーナリストだった。本書はその鋭い観察眼が依然健在であることを十二分に示しているといえよう。
最後に、本書の「あとがき」から、中国に関わる方々にとって非常に示唆的な一文を引用しておこう。いわく、“中国にのめり込まないことが、中国とうまくやっていくためのコツにもなる。(Record China読書推進協議会)

信太謙三氏は、2008年9月27日(土) 10:00〜12:00 (開場9:30)
東京都中央区八丁堀の東洋証券本社で「『世界のエンジン』中国が世界を引き寄せる」というテーマで講演をおこなう。入場希望者は、主催者の東洋証券本店営業部へお問い合わせを。
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