<直言!日本と世界の未来>景気回復6年目、民間企業が主導し米中経済も下支え=企業家たちの一層の発奮に期待―立石信雄オムロン元会長

配信日時:2017年12月31日(日) 6時40分
景気回復、民間企業が主導=企業家の発奮に期待―立石オムロン元会長
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景気の拡大局面が6年目に入ろうとしている。国内消費は力強さに欠けるが、米国や中国の堅調経済は輸出企業を中心に企業収益を押し上げている。経済の需要が供給を上回り、デフレ脱却へ、ほのかに出口が見えてきたが、課題も山積している。
景気の拡大局面が6年目に入ろうとしている。超低金利と円安相場が企業収益の支えとなり、雇用環境が改善。個人実質所得の伸び悩みで国内消費は力強さに欠けるが、米国や中国の堅調経済は輸出企業を中心に企業収益を押し上げている。経済の需要が供給を上回り、デフレ脱却へ、ほのかに出口が見えてきた。株価や雇用環境も好転し、産業人としては喜ばしいことと考えるが、課題も山積している。

今回の景気拡大局面は第2次安倍政権がスタートした12年12月に始まった。景気動向指数による景気の基調判断は17年10月も「改善」となり、回復期間は59カ月と高度成長期に57カ月続いた「いざなぎ景気」を超えた。02年2月から73カ月続いた戦後最長に続く戦後2番目の長さである。
 
最近の景気回復は民間企業の主導によるところが大きい。17年7〜9月の実質国内総生産は年換算額で約534兆円。13年1〜3月より約30兆円拡大し、設備投資は13兆円、輸出が17兆円増えている。
 
世界経済が堅調を保っていることが日本の景気を下支えしている。米国は17年の年末商戦が好調。大規模法人税引き下げも追い風になろう。中国経済は17年秋の共産党大会後もインフラ需要が好調で、堅調を維持している。

17年7〜9月期の日本の実質経済成長率は年率換算で2.5%。29年ぶりとなる7四半期連続のプラス成長の間、1%程度とされる潜在成長率をほぼ上回ってきた。日本経済は17年に入って需要超過に転換したと見ることができる。こうした中、東証平均株価は26年ぶりの高値圏で推移。資産の多い投資家ら富裕層の関心は高額の商品や不動産に向かっている。

課題は節約志向が強い中間層が果たして消費に向かうかどうかだと考える。内閣府がまとめた11月の消費者態度指数は13年9月以来の高い水準にある。消費全体を底上げするには、技術革新に対応する企業が収益を伸ばし、働く人の賃金を引き上げる必要がある。消費がけん引する形でデフレ脱却できるかは、企業の成長がカギとなる。脱デフレへの出口がほのかに見えてきたが、この道筋を確実なものとするためには、消費を底上げする賃上げの持続が不可欠だ。

しかし賃金増の恩恵は広がっていないようだ。首都圏の新築マンションは都心の高額物件が売れている一方、郊外マンションは価格高騰で若い家族層が敬遠、「2極化」しているのが実態だ。さらに非正規雇用が拡大する中で、食料物価や各種経費の値上がりは低所得層の疲弊につながり、消費鈍化の大きな背景となっている。

海外経済の拡大にはリスクも点在する。けん引役の米国の連邦準備理事会(FRB)では、株高がバブルではないかと警戒し始めた。利上げのペースが速まれば、景気減速のリスクが生じる。北朝鮮問題の混乱は訪日客の動向などに影響を与えかねず、急激な円高に見舞われれば企業収益が損なわれる。

25年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる。少子高齢化の進展は、社会保障負担で国の財政を圧迫する。政府・日銀が政策判断を誤れば、政府債務の膨張を受けて金利が上昇し、国債が暴落するリスクも高まる。こうした将来への不安は企業や国民の「財布のひも」を固くし、内部留保や消費抑制の要因となっている。

思えば日本企業は、かつてのドルーショック、オイルーショック、円高ショックなど、次々に到来する難題をクリアし、新しい環境に適応しつつ、世界で最も生産性の高い経営を成し遂げてきた。

確かに今、グローバリゼーション、情報技術(IT)、人口知能(AI)革命など、これまで経験しなかった新しい環境変化に直面してはいるか、それは競争が世界規模に急拡大したこと、これまでにない新しい知識サービス産業が生まれつつあることなど、企業にとっては新産業剔出への新しいチャンスが到来したことを示している。

こうした時代の転換期にあって企業は、より大きな歴史観、大局観をもって新時代の到来を認識し、自らの海図を描き、その方向に向けて果敢にチャレンジすべき時に来ている。
 
そのためには、第一に、ITに代表される先端技術を採り入れる柔軟な感受性をもって企業改革を進めること、第二に、世界に通用する市場ルールに則った経営を進めること、第三に、常に将来の企業の価値の向上に向けた経営、換言すればブランド価値向上への経営戦略を進めることが重要だ。その結果として、第四に、たとえ小さくても世界に比類のない優れた特徴を持った「ピカピカ光る企業」へと進化・加速していくこと、すなわち、クリエ−ティブーカンパニー、リーディングーカンパニー、コンペティティブーカンパニーになっていくことが求められるだろう。企業家たちの一層の発奮に期待したいところである。

同時に、年間の改革と革新を支えるためには言を待たず、しっかりした国民の意志を反映する「国内・外交政策」も含めたバランスの取れた政策の推進が必要である。この時に至っても、今だに野党再編でもめている時代ではないだろう。

今年の締めくくりに、読者の方々に感謝を込めつつ、来年が良い年になるよう祈りたい。どうぞよろしくお願いします。

<直言篇35>

立石信雄(たていし・のぶお)
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC=企業市民協議会)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。
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