<コラム>「中国人スタッフは無責任で信用できない!」が偏見であることを、身をもって証明した留学生

ゆーちゃん(渋谷汪子)    2017年12月19日(火) 20時10分

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「都心の飲食関連のお店は、どこも人手不足でしょ?ウチも、なかなか求人に人が集まらなくて困ってるよ」。そう言って頭を抱えるのは、東京で飲食業を営む知人の経営者だ。写真は日本のアニメが大好きだというココさん。筆者提供。

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「都心の飲食関連のお店は、どこも人手不足でしょ?ウチも、なかなか求人に人が集まらなくて困ってるよ」。そう言って頭を抱えるのは、東京で飲食業を営む知人の経営者だ。

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万年人手不足の飲食業界。HR総研の「2015年新卒採用徹底解剖」資料によると、学生の4人に1人は、就職先として最も敬遠する業界として外食産業を挙げている。大手飲食店すら人材確保に苦戦する昨今、個人経営のお店が、たった1人のスタッフを確保するために、どれだけ大変な思いをしているか想像に難くない。

実は、最近この手の悩み、相談を飲食業の経営者の方たちから聞くことが多くなった。だから、自分は手っ取り早い方法として、「ウチの交流会には、数千人の中国人が登録しているので、誰か良さそうな人がいたら紹介しますよ」と提案するのだが、「え?でも、中国人でしょ?なんか信用できなそうなイメージだね」と、決まって相手側の反応が良くない。

そういう人たちに対しては、「今まで中国人を雇用したことはありますか?それか、中国人の知人はいますか?」と、いちおう聞いてみることにしているのだが、「いや、それはないけど。一般的に中国人ってそういうイメージだよね」というような回答が返ってくることがほとんどなのである。要するに、完全に偏見のかたまりなのだ。

ここで、実際にあった、中国人留学生のエピソードを皆さんにお伝えしたい。

2年前の夏、俺は都内の日本語学校に通う、ココさんという中国人留学生と知り合い、友人付き合いをするようになった。ココさんは当時22歳。中国の大学を卒業し、日本の大学院で、日本の文化を研究するためにやってきたのだという。

ココさんに「普段、学校以外の時間は何をしているの?」と聞くと、日本での生活費を稼ぐために、放課後はレストランでアルバイトをしていると答えた。アルバイトは、かれこれ数カ月ほど続けているとのことで、日本語のほかに、日本の文化、習慣なども学ぶことが出来て、働くこと自体が大変勉強になっていると話していたのが印象的だった。

そんな彼女と知り合ってから、数カ月ほど経ったある日のことだ。突然、救急車の隊員から自分の携帯に、「ココさんの身内の方ですか?ココさんが都内のカフェで倒れて、いま病院まで搬送中なので、至急来てください!」と連絡があった。

当時はサラリーマンだったので、一体何事か?と思い、急ぎ会社を早退して病院まで駆けつけると、やつれた姿のココさんが点滴を打ちながら病院のベッドの上で横たわっていた。医師に事情を聞くと過労が原因だという。

彼女は大学院の出願も間近で、色々と入試の準備をしなければならないのに、放課後のアルバイトに時間を割かれてしまうため、アルバイトが終わってから帰宅後、深夜まで大学院入試のための準備をしているというのだ。

以前、彼女から「実家は、中国でも中流くらいにあたる」と聞いていた自分は、「だったら、今の時期は両親に仕送りしてもらって、バイトをやめて大学院の入試に専念しなよ!」と伝えたのだが、彼女は、それを聞いてゆっくりと口を開くと「経済的な問題ではありません。今の職場は、とても人手不足の状況で、私が辞めると皆の負担が増えてしまうんです。それに、私が突然、無責任な辞め方をしてしまうことで、中国人全体が無責任だって思われることが何よりも嫌なんです」と、悲しそうな眼差しで、自身の胸中を吐露した。

その言葉に嘘偽りがないことは、病院のベッドの上に、やつれた姿で横たわる彼女の姿が証明していた。「個を押し殺して、公のために、ここまで頑張れる人がいるのか」。そう考えると胸が熱くなった。

入院から3日後、静養して、すっかり体調を回復した彼女は、病院を無事退院すると、最後までアルバイトと大学院入試のための準備を両立させ、無事入試を終えた。

その後、職場には何名かの新人スタッフが加わり、日本人の同僚らに惜しまれながらも、新天地を求めてココさんは転職することになった。すると、同僚らは「ココさんありがとう」という文字をケーキに添えて、彼女のためにささやかな送別会を開いてあげたのだという。送別会でココさんは溢れ出す涙が止まらなかったそうだ。ココさんの誠意が、今まで頑張ってきた努力が、このケーキに全て集約されていると俺は思った。

彼女は、自らの信念を貫き通すと同時に、「中国人スタッフは、無責任で信用できない」という偏見は間違っていると証明したのだ。異国の地で頑張る、一留学生が俺たちに教えてくれた。大切なのは“国”や“人種”ではなく、“一人の人間”として向き合うことなのだと。

■筆者プロフィール:ゆーちゃん(浦 雄一)

大手商社総合職だった父親、国際線CAだった母親に、グローバル人材になるための教育を受けるが、まったくと言ってよいほど勉強に興味が持てず落ちこぼれる。99年より、大好きだった三国志に触発され中国留学を決意。数年の北京生活を経て、中国という国の魅力にドハマりする。自身が代表を勤める「Japanese & Mandarin Union-JMU」は、全国各地の中国語団体が加盟する、日本最大の中国語コミュニティの1つとなっている。

■筆者プロフィール:ゆーちゃん(渋谷汪子)

大手商社総合職だった父親、国際線CAだった母親に、グローバル人材になるための教育を受けるが、まったくと言ってよいほど勉強に興味が持てず落ちこぼれる。99年より、大好きだった三国志に触発され中国留学を決意。数年の北京生活を経て、中国という国の魅力にドハマりする。自身が代表を勤める「一般社団法人Japanese & Mandarin Union-JMU」は、首都圏最大の中国語コミュニティの1つとなっている。

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