試験で不正をして謝りもしなかった私に、日本人の先生からメッセージ―中国人学生

日本僑報社    2017年12月3日(日) 13時50分

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中国の学校で日本人教師から日本語を学んでいる学生の中には、言葉だけでなく価値観や物事の本質を教えられたという人も少なくない。南京農業大学の張彩玲さんは、日本人の教師に叱られた経験を自身の作文につづった。資料写真。

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中国の学校で日本人教師から日本語を学んでいる学生の中には、言葉だけでなく価値観や物事の本質を教えられたという人も少なくない。南京農業大学の張彩玲さんは、日本人の教師に叱られた経験について、作文に次のようにつづっている。

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試験終了を知らせるベルが鳴った後で、私は解答用紙に間違いを見つけました。先生方が用紙を集め始めました。私の席に来るまでには時間があります。すぐ修正しなければならない、そう思って一生懸命に書き直しました。あと少し、説明を加えようとしていたところ、ポンと誰かが私の頭を叩きました。顔を上げると、手に丸めた試験用紙を持った石原先生が私の前に立っていました。「試験は終わりました、もう書かないでください。あなたは残りなさい」。先生の語気は強く、怒っているように見えました。

最後の一人の学生も出て行って、教室の中は先生と中国人の先生、私の三人だけです。先生は何も言わず私を見ています。雰囲気が非常に微妙で、私はちょっと緊張していました。しばらく沈黙した後、先生は私の行為を責め始めました。カンニングだと言うのです。しかし、こんなことはカンニングには当たらない、その時の私はそう思っていました。私は他人の解答を見たのではありません。自分で自分の間違いを見つけて、解答用紙が回収されるまでの時間を利用して書く事の、一体何が問題なのか。私はそう言いました。

先生は私の話を聞いたあと、ひとつの問題を私に出しました。「試験の規則は何か」。何も答えられない。「試験時間を超えて解答を書くことは許されていません。他人の答えも見ることと同様に不正行為です」。先生は真剣な表情で言いました。私は人格を否定されました。先生は無理やり不正行為を探しているようです。自尊心を傷つけられ、涙を流さずにはいられませんでした。辛くて悔しくて泣き続けました。

泣き続ける私に先生は「午後の試験はありますか」と尋ねました。泣いているから上手に返事ができません。「今日はここまで、帰って反省してください」。そう先生に言われて塞いだ気持ちのまま帰りました。寮に帰っても、気持ちは高ぶったままです。昼寝をしようと思っても、先生の話を思い出して眠れない。そんな時に、先生からメッセージを受けました。「信頼しているから叱りました。泣きたいのは私の方です」。そう書いてあります。そして、次の試験に向けての励ましの言葉がありました。

今でも、先生のメッセージを読んだ時の感動を忘れることができません。先生の優しさに感謝しながら、自分の態度を深く恥じ入りました。謝りもしない私に先生はメッセージを送ってくださいました。冷静に考えてみれば、簡単な話です。試験の規則に違反すれば、後で何を説明しても言い訳です。不正を不正とも思わないのは、それが私の中で当たり前になっていたからです。私は、ばれる心配すらしていませんでした。先生に指導されなければ一生分からないままだったでしょう。

以前先生が話してくださったことを思い出しました。先生の教え子が日本に留学し、焼肉屋さんでアルバイトをしていた時のことです。焼き網を洗い終えた直後、店長さんに「洗っていない」と言われたそうです。先生に教えられていた彼は、すぐに残っている汚れに気付き「すみません」と言うことができました。汚れが残っていれば使い物になりません。仕事をしていないのと同じことです。

私なら、事の本質に気付くことなく「私は本当に洗いました。嘘じゃありません」と、洗うという作業をしたことを強調していたと思います。そして、自分がやった仕事を無かったことにされたとずっと憤慨し続けたはずです。

翌日、物事の本質を教えて下さった石原先生に感謝の手紙を書きました。生まれて初めて書いた日本語の手紙です。間違いだらけですが、一生懸命書きました。綺麗な封筒を用意し、先生に手渡しました。先生は何度も何度も頷きながら読んでくださいました。そして、あの手紙を今も机の上に飾ってくださっています。それを見るたびに、少しの恥ずかしさと共に感謝の気持ちが甦ってきます。(編集/北田

※本文は、第十二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「訪日中国人『爆買い』以外にできること」(段躍中編、日本僑報社、2016年)より、張彩玲さん(南京農業大学)の作品「日本語の手紙」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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