<コラム>「ちょっと待ってください」と聞くと、韓国人はほとんどが笑う

木口 政樹    2018年3月29日(木) 23時50分

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セキ、イセキ、コセキ。日本人の名字である。この名字の人に対してわたしがなにかの恨みがあるわけではないが、これらの発音は韓国語では「ヨク」といって、ののしりことば、けんかことばに相当するものなのである。写真は韓国・ソウル。

セキ、イセキ、コセキ。日本人の名字である。それぞれ「関」「井関」「小関」と書く。この名字の人に対してわたしがなにかの恨みがあるわけではないが、これらの発音は韓国語では「ヨク」といって、ののしりことば、けんかことばに相当するものなのである。

セキは多少つまる音を入れるように「セッキ」、イセキは「イセッキ」といえばほぼ完璧なヨクとなる。つまりセッキとかイセッキということばは、「この野郎」とか「てめえ」とか「きさま」とか「くそ野郎」などということばなのである。

コセキは愛敬でいれてみた。コセキに相当するヨクは直接にはないが、コセキというとたいていの韓国人は笑ってしまうのだ。セキ(セッキ)という発音部分があるからだろう。よくもこれだけ韓国語のヨクと似た発音の名字が日本にはあるものだなあ、と感心してしまうほどだ。

昔、韓国の日本大使館に「イセキ」さんという人が勤務していたらしい。彼は韓国にはとてもおられず3カ月で日本に帰ってしまったというエピソードが伝わっているが、真偽のほどはよくわからない。こういう話って結構実話であることが多いので、たぶんほんとの話だろうと筆者は思っている。

韓国語に「ヨク」が多いということは、言語学の世界ではよくいわれている。ヨクを言い合うことで大きな争いを未然に防いでいるともいう。ことばを吐き出すことで早めにすっきりしてしまうというわけだ。

無言ではらに溜めておいて、あとでいきなり爆発してしまう傾向のあるどこかの国とは若干の差があるようだ。ヨクということではロシア語が世界一という。詳しくはわからないがゴーリキーの本にそうあると、作家(翻訳家)の米原万里さんがどこかの本に書いていたように記憶している。

そのほか、すごろくやゲームでの「アガリ」、サムライの「チョンマゲ」、イヌの一般的な名前の「ポチ」、「ぼちぼち行くか」の「ぼちぼち」なども韓国社会で口にするには、いささか緊張をともなうことばたちだ。

アガリは口(くち)の意味で口の下品なことば、チョンマゲは「おっぱいをおおうもの」という意味になるらしい。ポチまたはボチは、女性性器を意味する俗語と非常に音が近い。

日本語教材にはときおり、「イヌのポチがはしゃいでいます」とか「それじゃぼちぼち出かけますか」、はたまた「このグラウンドはもともと墓地(ぼち)でした」などという文章が載っている。授業中こんな文章に出会うと、そのたびにハッとなってしまう。

しかしそこでつかえたりどもったり笑ったりしたらそれこそ手におえなくなってしまうから、わたしはいつもわざとなんでもないという風なよそおいで、さっと読み飛ばしている。

学生らも「あれっ」とは思うのかもしれないが、発音が瞬間的に消えさってしまうためにそこで何か問題になったことは今のところまだない。

その他では、「ちょっと待ってください」という発音を聞くと、韓国人はほとんど笑ってしまう。これは「ちょっとまって」までの部分が、男性性器あるいはおっぱい同士をくっつけあいましょう、という意味になるからである。ことばというものは、奥が深くて実におもしろいものである。しかし公式な場面で失敗しないためには、あらかじめこうしたことばを知っておく必要があるかもしれない。

■筆者プロフィール:木口政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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