この夏読みたい中国本その1『中国ビジネス笑劇場』

Record China    2008年7月14日(月) 9時5分

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中国を知るために、ぜひ読みたい中国本。その第一回は、『中国ビジネス笑劇場』(杉野光男著、光文社Paperbacks)

Record China読書推進協議会では、中国を知るために、この夏ぜひ読みたい中国本を紹介する。その第一回は、『中国ビジネス笑劇場』(杉野光男著、光文社Paperbacks)だ。

こと中国に関する世の中の論調は実に賑やかだ。賑やかではあるけれども、いささか単純に映る。「嫌中」あるいは「反中」、そうでなければいわゆる「親中」的立場のどちらかに分類されてしまうといっても過言ではないからだ。まことに以って“芸がない”のである。

しかし本書は、図らずして(ひょっとすると図って…かもしれないが)、そんな中国を扱った日本の言論の“芸のなさ”に一石を投じたことになる。中国でひそかに語られたりショートメールでやりとりされたりしているジョークを軸にして現代中国の側面を浮かび上がらせようとする、きわめて大胆不敵で手の込んだ試みのようにみえるからである。…というとなにやら堅苦しくなってしまうが、要するに本書は、プロレタリア独裁を標榜する現代中国においてもジョークやパロディが健在であることをあらためて教えてくれると同時に、何が笑いの対象になっているかを知らしめてくれる快著なのである。

もともと中国には質量ともに日本とは比較にならないほど豊かな諧謔文化の伝統があるわけだが、中国共産党支配下の現代においてもそれが脈々と受け継がれている。それを教えてくれるような中国ジョークを扱った書籍はこれまでもあったが、本書に紹介されているようなものほど辛辣(かつ下品)なジョークを揃えたものはなかった。著者は中国駐在経験のあるビジネスマンらしいが、おそらく「こんな面白いジョークを仕入れた」という現地人のナマの情報に接する機会に恵まれていたに違いない。収録されたジョークには、よくもまぁ、こんなネタがあったものだと感心するようなものが少なくないのである。

本書にも紹介されているが、かつて旧ソ連時代に世界中でウケたジョークの古典がある。「クレムリンの赤の広場で男が『スターリンの大馬鹿野郎!』と叫んだ。もちろん男はすぐに逮捕された。罪名は“国家機密漏洩罪”だった」という、例のヤツだ。このように、圧倒的な権力や権威はジョークやパロディの格好の餌食になる。では、この種のジョークははたして現代中国にもあるのだろうか。

その答えは本書を読んでのお楽しみだが、いまだに中国は一枚岩だと思い込んでいる日本の単純な「反中」論者や「親中」一辺倒の先生方には、早速本書を手にとって、現在の中国におけるジョークの多様性を感じ取って貰いたいと思う。何どういうふうに揶揄されたり笑われたりしているかを知ることは、実はその社会の今を大掴みする有効な手段の一つなのだが、そんな手段があることを提示した本書はそれだけでも“芸がある”と評してもいいだろう。

“笑撃”をもたらした新刊『中国ビジネス笑劇場』(杉野光男著、光文社Paperbacks)

(Record China読書推進協議会)

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