<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼・五輪テスト大会を振り返る〜(1)“完璧”だがやり過ぎも…大会運営編

Record China    2008年6月7日(土) 13時27分

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去年8 月から、北京市内で次々と行われた五輪テスト大会のシリーズ「グッドラック北京」が幕を閉じ、いよいよ8月の本番を待つばかりとなった。写真は07年12月6日、「グッドラック北京」新体操の大会。

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去年8 月から、北京市内で次々と行われた五輪テスト大会のシリーズ「グッドラック北京」が幕を閉じ、いよいよ8月の本番を待つばかりとなった。

オリンピックの開催要項などを定めた「五輪憲章」にあるように、開催国は大会開幕までに、実際の会場と運営体制をテストする“プレ五輪”を開催する必要がある。北京は、去年8月の順義オリンピック水上公園での大会を皮切りに、42競技でテスト大会を開いてきた。

私は、五輪を前にした北京市民の盛り上がりと会場や運営体制の状況を取材するため、行われた大会のほぼ全てに足を運んできた。日本人選手の調整具合を取材のメインとする日本メディアとは少し違う角度で、これらのテスト大会をつぶさに観察してきた。その独自の立場から、一連のテスト大会を振り返って、会場設営、運営、ボランティアなどいくつかの視点から、その総まとめをしてみたい。

(1)大会運営

「今大会はあくまでテスト大会。メディアの皆さんは欠点をあげつらうのではなく、今後の改善のために、ともに大会を作り上げるという視点で大会を見守っていただきたい」

去年夏、五輪テスト大会がスタートする直前に中国メディア向けに行われた説明会での責任者の言葉だ。“手強い”中国メディアに釘を刺した一言だが、私自身は、運営サイドが実際の大会を通じて、より完璧な大会を作り上げようという積極的な思いも感じ取った。これまでの中国で行われる大会で見られたある種の「傲慢さ」ではなく、とにかく運営側も必死でやるから、メディアも協力して欲しい…という、ある意味、五輪成功に向けた悲壮な思いが伝わってきたのだ。

実際、テスト大会の運営体制は、その「悲壮」ともいえるほどの覚悟が表れていたものだと思う。大会の運営スタッフは、各国営機関から派遣された、いわば“エリート”である職員が中心メンバーとなって組織され、北京中の大学から、心理テストや語学力テストを課して選び抜いたボランティアが周辺を支えた。各大会とも300人から700人の運営スタッフが試合の進行、医療サービス、選手・役員の接待、観客やメディアへの対応などに当たった。

ある大会の試合進行表を見せてもらったことがあるが、秒刻みでスタッフの各持ち場の動きが記されており、少なくとも、私が知る限りでは、運営体制がこれほど綿密に整備されたスポーツ大会は今までになかった。すでに1年前から、北京五輪本番を意識して、運営体制を作り上げてきたわけであり、少なくとも前回のアテネ大会の準備状況より、断然よかったと思う。

私はメディアの立場で、今大会に関わったので、どうしてもメディア対応に意識が向く。もちろん会場ごとにバラつきがあるものの、ボランティアの学生の皆さんは、元気に記者席の間を飛び回って、飲料水のケータリングをしてくれたり、次々と出される報道資料を配布したりしてくれた。北京の厳しい暑さと寒さで会場に行くのがいやになる時もあったが、会場で運営スタッフの皆さんが、厳しい気候にも負けずに仕事を続けている様子を見て、私も励まされたものだ。

また、屋外でノートパソコンを使用しているときに、太陽光を遮るためのカバーをさりげなく差し出してくれたりと、非常に細かいことだが、心配りも行き届いていて、私自身は取材中、うれしいことが多かった。

ただ運営上の問題点もいくつか見られた。先日、国家体育場(愛称:鳥の巣)で行われた陸上テスト大会で、ITTFの責任者も言っていたが、競技場内に運営スタッフが「多すぎる」という問題だ。これは陸上だけではなく、テスト大会全てで感じたこと。運営体制を万全にするために、選手誘導、メディア対応、試合進行など各セクションに豊富なスタッフを揃えたのはいいが、スタンドから見ていると、選手や報道陣よりも、オレンジ色のポロシャツを着たスタッフの姿が目立つ。これが逆に円滑な試合進行を妨げることがあるのは皮肉なことだが、やはり最小限の人数をフィールドにおく工夫が必要だろう。

また、この「スタッフ過多」は、互いの連絡不足も生み出す。去年夏に行われたビーチバレーの大会で日本人選手は、「全体的には非常に素晴らしい運営だった」と前置きした上で、「スタッフの言うことがみんな違っていて、統一が取れていない」という不満を口にした。長い間、中国に生活していれば分かるのだが、この手の問題はよく起きる。それぞれが縦割りの体制で臨んでいるため、各セクションによって言うことがバラバラになるのだ。例えば集合時間一つにしても、当初は、スタッフによって時間が違っていたり、別の人に聞くようたらい回しにされたり、ということがあったようだ。

いかに“少数精鋭”でくまなく、各方面の要望に応えるか…大規模な大会運営で一番難しい点だと思うが、多くの開催経験により、得た教訓も多かったはず。本大会ではもっと素晴らしい大会運営をしてくれるものと期待したい。

<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>

■筆者プロフィール:朝倉浩之

奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。

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