<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼・受難続きの郭晶晶、妊娠騒ぎのあとは予選落ち

Record China    2008年6月2日(月) 19時41分

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5月31日まで中国・南京で行われていた飛び込みのワールドシリーズで、3m板飛び込みに出場した「飛び込み女王」郭晶晶はまさかの予選落ち。場内の観客をがっかりさせた。

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「飛び込み女王」の元気がない…

5月31日まで中国・南京で行われていた飛び込みのワールドシリーズで、3m板飛び込みに出場した「飛び込み女王」郭晶晶はまさかの予選落ち。場内の観客をがっかりさせた。

郭晶晶といえば中国の飛び込み第1人者。国内では、ヤオミン、劉翔と並んで絶大な人気を誇るアスリートで、各大手企業のCMにも引っ張りだことなるなど、「商品価値が高い」スポーツ選手としても知られている。香港の大富豪の御曹司と結婚間近といわれたり、自ら水着写真をブログに掲載したりと、その“お騒がせぶり”も群を抜いている。

そんな郭晶晶は最近、受難続きだ。

3月に北京で行われたW杯で、試合後、ライバルの選手を「おデブちゃん」と言ったり、記者団の質問に皮肉交じりに答えるなどやりたい放題。これがメディアの不評を買い、大バッシングが繰り広げられた。またフィアンセとの携帯電話の「熱愛メール」が表に出るということもあった。

だが、本人にとって、最も大きな打撃になったのは、先月半ばの「妊娠報道」事件だろう。先月、「郭晶晶、妊娠して国家代表を引退」という電撃的ニュースが流れた。シンガポールメディアの報道が発端となり、これが政府系の「人民網」や世界水泳連盟の公式ウェブにも転載されて、実しやかに世界を駆け巡った。

その翌週には、郭晶晶は四川大地震のチャリティイベントにも顔を出したし、北京市内のプールで練習を続けていたから、これは全くの「ガセ」なのだが、中国国内メディアだけでなく、日本の大手民放テレビ局までもが“オモシロ半分”に取り上げ、一大スキャンダルとなった。

5月30日、大会開催中の南京で報道陣に囲まれた郭晶晶は、この「妊娠騒動」について触れ、「こんなことウソに決まってるでしょう。どうして(記事に)書くの?これは皆さんの問題。私とは関わりない」と報道陣に怒りをぶつけた。このあと、スタッフに引っ張られるように袖に下がっていったが、心中は穏やかではないだろう。

今大会、郭晶晶は予選落ちした。午後の3m板飛び込みの予選で、1回目と最後の演技でいずれもミスを犯し、予選組3位となり、決勝進出はならなかった。彼女の競技生活の中で、2度の失敗をすることは今までになかった。あるメディア関係者は、試合終了後の記者会見に出席したくないために、「彼女はわざと負けた」と推測する。あながち、否定はできないだろう。だが、そうだとすれば「飛び込み界の至宝」ともいえるアスリートを「わざと試合に負ける」までに追い詰めたメディアの責任は大きいと思う。

何より、「飛び込み女王」の演技を見るために、会場に足を運んだ南京市民の皆さんが気の毒だ。

そして、この責任の一端は外国メディアの報道を鵜呑みにして、興味本位で情報を垂れ流した日本メディアにもある。政府系メディアの「記事転載」だけをソースにして、全ての裏をとったかのように振舞うやり方はもはや「報道」ではない。しかも、自国のアスリートならともかく(いや、それもダメだが…)、お隣の国のアスリートの“デマ”の片棒を担ぐのは、いかに日本国内の中国に対する関心が高まっているとはいえ、やりすぎだと思う。

郭晶晶については、5月31日、香港メディアが「北京五輪後、結婚引退へ」と報じ、ご丁寧に新居まで写真つきで紹介されるなど、まだまだ報道は過熱気味だ。

裏を返せば、彼女の注目度があればこそ、であり、また元々は、彼女がこれまで「売名行為」とも言われるような発言やスキャンダルを起こしてきた過程があり、今のバッシングはその「報い」と考える人も多い。

だが、彼らの祖国で開かれる最高の舞台を前に、一流のアスリートには、一流の環境を提供してやって欲しいと思うのは、スポーツを愛する者としての願いだ。彼らの頑張りを最前線で「応援」するべきメディアが、逆に彼らの足を引っ張ってしまうのは、やはり何かがおかしい。

<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>

■筆者プロフィール:朝倉浩之

奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。

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