<直言!日本と世界の未来>大勝した安倍政権は謙虚な姿勢で成長戦略推進を―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2017年11月5日(日) 5時0分

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自民党が衆院選で大勝し、安倍晋三政権が続くことになった。安定政権の継続により、経済各界に安心感が生まれ、株式市場は活況に沸いている。経済人の一人として安堵しているが、その勝利はそれほど強い民意に支えられていたとは言えない。

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自民党が衆院選で大勝し、安倍晋三政権が続くことになった。安定政権の継続により、経済各界に安心感が生まれ、株式市場は活況に沸いている。経済人の1人として安堵しているが、その勝利はそれほど強い民意に支えられていたとは言えない。1議席を争う小選挙区制度では、第1党の獲得議席の比率が得票率に比べて大きくなる傾向があり、この制度が自民党を後押ししたことは否めない。

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投票しなかった人を含む全有権者に占める自民党の絶対得票率は小選挙区で25%、比例区では17%にとどまる。安倍首相は投票翌日の記者会見で「今まで以上に謙虚な姿勢で真摯(しんし)な政権運営に努める」と語ったが、有言実行を望みたい。

一方、衆院選で敗北した野党の混乱が続いている。民進党は希望の党への合流方針を撤回して存続するが、単なる数合わせでは国民の信頼は取り戻せない。民進党や希望の党関係者は、有権者から厳しい評価を受けた原因を深く探り、政策本位で安倍政権と競い合うべきであろう。

本直言シリーズ<24>「アベノミクス、さらなる成長戦略を=グローバル化と日本の課題、総選挙に寄せて」で記したように、政治と経済はまさに車の両輪である。強いリーダーシップのある政治があってこそ、グローバルに展開している企業の活動が、より効率的になるのは言うまでもない。すなわち、グローバルに展開する企業活動の応援団として支えてくれるのが政治の強さである。

旧来の既得権益者の抵抗を抑え、日本再生のための残された改革を、ただ単に掛け声だけでなく早急にやり遂げるためには、政治の強いリーダーシップが求められる。安倍政権が主導する「アベノミクス」はその表れと期待され、世界も注視している。ところが異次元緩和に象徴される金融政策に偏重し、経済の効率を上げGDPをかさ上げする成長戦略に乏しいのは、残念なことである。それができてこそ、再び、政治と企業が行う経済活動が両輪として機能し、日本の強さを世界に打ち出し得る。

すべての政治家が、「党利党略」を離れて、世界に目を向け、その動きを自らの目で認識し、それとの対比で日本の抱える問題を感じとり、唯一、国益のみを考えて行動することが必要だ。

繰り返しになるが、民主主義が機能するためには、頼れる健全な野党が必要であり、政権交代に現実味がなければ、政権党は緊張感を失い、おごりや腐敗につながりかねない。政策や理念が置き去りにされ、中長期的なビジョンより短期的な人気取り政策が優先されてしまわないように切に望みたい。

<直言篇27>

立石信雄(たていし・のぶお)

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC=企業市民協議会)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人・藤原歌劇団・日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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