<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼・パラリンピックへ向けて…盛り上がりつつある障害者スポーツ

Record China    2008年5月20日(火) 21時41分

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北京五輪が閉幕後、ここでは引き続き、障害者のスポーツの祭典「パラリンピック」が行われる。五輪に大きな注目が集まるが、このパラリンピックを機に中国の障害者スポーツがどう変化していくかも大きな注目点である。写真は中国車椅子バスケットボールチームの練習風景。

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北京五輪が閉幕後、ここでは引き続き、障害者のスポーツの祭典「パラリンピック」が行われる。五輪に大きな注目が集まるが、このパラリンピックを機に、中国の障害者スポーツがどう変化していくかも大きな注目点である。

そんな中、18日、北京市東城区で地域の「障害者スポーツ大会」が開催された。

同区の「東四“社区”(都市の地域単位で、日本の“町”よりやや小さい)」が開いたもので、200人の障害者が参加した。参加者は視覚・聴覚に障害を持つ人、肢体不自由な人、知的障害を持つ人など、障害の種類もさまざまだ。

大会は、地区の小学校の運動場が使われ、バスケットボールのドリブル競争、サッカーのPK戦、ボーリング、鉄アレイのリフティングなどそれぞれの障害に応じた8競技が設けられた。選手たちは、団地ごとにチームを作り、近くの大学生が組織するボランティアに支えられながら、“熱戦”を展開した。

進行は非常に本格的だ。選手全員の入場のあと、きちんと“専門”の武装警察官がやってきて、国歌が流れ、国旗が高々と揚がった。続いて、会場となった小学校の児童らが組織するチアリーダーチームがダンスを披露。続いて、地域住民による中国伝統の踊りがあり、障害を持った方のグループによる「太極球(球を使った伝統のパフォーマンス)」も大きな拍手を浴びた。披露されるパフォーマンス、運営、そして参加する人たちも全て地域住民。非常に手作り感のあるイベントだが、非常に温かみのある活動だった。

サッカーのPKゲームでは、知的障害を持った方は、体が思うように動かず、うまくボールを蹴ることができない。それをボランティアが蹴り方を一生懸命説明して、何とか、ボールが前に転がる。住民らは、その周りを取り囲み、声を限りに応援する。こういったイベントはえてして、嫌味っぽくなってしまうのだが、大会そのものの素朴さと住民の皆さんの一生懸命さで、そういった感じがまったくない。

蹴り終えた選手は、結果に不満足なのか、悔しそうにコートを去る。だが、見事に“任務”を果たした選手に、応援の住民らから大きな拍手が送られる。選手たちは本当に一生懸命だし、うまくいったときの笑顔も素晴らしい。そして、これを作り上げている住民たちの情熱、熱気を感じた。

今回出場したのは、この地域在住で、障害者としての「認定」を受けた人は1200人あまり。そのうち、車椅子もしくは歩行で、通常の運動ができる人がスポーツ大会に出場した。今回で3回目を迎え、初めて行われた2005年大会より参加者が倍に増えたという。

今回のイベント自体は、地域の運動会の「障害者」版というほどの規模のものである。

ただ、障害者行政がなかなか目に見えた形で出てこない中国の都市部で、地域単位でこういった取り組みを行っているということは非常に興味深い。

そして、こういった障害者の運動会が、去年以降、全国で300回行われているというのも驚きだ。北京では、五輪を前に、「全民健康(住民全員が健康に)」と題する活動が行われており、その一環として、「障害を持った人たちも外に出ていこう」という呼びかけがなされている。その流れの中に、このスポーツ大会があるといえよう。

北京市のスポーツ担当者によると、去年からこれまで、地域規模の障害者スポーツ大会を全国で計1000回開催することが目標となっているという。これも五輪を前にした地域スポーツの変化といってもいいだろう。

大会責任者の孫さんは、こういった活動を通じて「障害者に優しいコミュニティ作り」をしていきたいと語る。都市のバリアフリー化を含めて、インフラ面ではまだまだという北京の障害者行政だが、まず障害者が積極的に外に出て行って、住民みんなでサポートしながら、一つのイベントを成功させるという取り組みは、「住民の意識」を向上させていく上で大きな意味合いを持つだろう。

中国での北京五輪に向けた活動というと、国威発揚を目的とした国家主導型の大型イベントばかりが目立つが、北京の街角では、こういった住民本位の草の根活動が着々と動いていることを忘れてはならないと思う。

<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>

■筆者プロフィール:朝倉浩之

奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。

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