初の日本旅行で訪れた大阪、あの料亭での出来事を思い出すたびに…―中国人学生

日本僑報社    2017年9月10日(日) 12時30分

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合肥優享学外語培訓学校の張凡さんが好きなのは「演歌」だ。初の日本旅行で好きな演歌「浪花恋しぐれ」ゆかりの地・大阪を訪れた時の出来事を、作文につづっている。資料写真。

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中国人が好きな日本文化といえばアニメや美食などが真っ先に挙げられるが、合肥優享学外語培訓学校の張凡さんが好きなのは「演歌」だ。初の日本旅行で好きな演歌「浪花恋しぐれ」ゆかりの地・大阪を訪れた時の出来事を、作文に次のようにつづっている。

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雨の横丁。法善寺。目の前に、小雨に濡らされた路地裏が伸びていた。私の予想と異なり、人通りがなく、静かな場所だった。私は友人と一緒に携帯電話の地図をたよりに、予約していたお店を探した。やっとのことで石の壁にあった看板を見つけた。

演歌が大好きな私は、去年日本に行けることが決まり、どうしても法善寺を見に行きたいと思った。「雨の横丁 法善寺 浪花しぐれか 寄席囃子 今日も呼んでる 今日も呼んでる ど阿呆春団治」と、名曲「浪花恋しぐれ」を聞くたびにそこで歌われている日本文化の美しさに心酔しながら、「法善寺」「横丁」とはいったいどんなところなのか、歌詞の背景にはどんな物語があるのか気になった。そこで、この記念すべき初の日本旅行を大阪から始めることにした。

緊張しながら暖簾をくぐると、着物姿の女将さんが笑顔でカウンターに案内してくれた。私たちが初めて日本に来たと知り、すごく驚いていた。「どうやってうちを知ったんですか」と聞かれて、少し笑いながら「実は演歌なんです。『浪花恋しぐれ』が大好きで、その歌詞に横丁が出てくるので」と答えた。話を聞いていた大将も驚いて話しかけてくれた。「ああ、都はるみさんの歌やったっけ。大阪弁がいっぱいやったけど、意味わかりますか?」。私は「まあいろいろ調べたんで」と答え、以前から秘かに勉強していた大阪弁を使ってみた。「おっちゃん、これなんぼ」「やりよるな」と、このやり取りに周りにいたみんなが笑った。

歌詞に出てくる「ど阿呆」と「春団治」についても聞いてみた。「ああ、『ど阿呆』やな、『阿呆』のことやで。阿呆をもっときつくした言い方やな。春団治はそんときの落語家で、スーパースターやったんやで」と大将が親切に教えてくれた。寄席囃子は三味線や笛の演奏だということも大将から聞き、「歌詞の中で『呼んでいる』のは、落語家の名前なんですね」と答えた私は、劇場全体が聴衆の笑いに包まれ、みんなが「春団治、ええぞお」と声を上げている情景が目の前に浮かんできた。春団治は妻に支えられながら、一歩ずつ壮大な夢を叶えた。そして、雨の横丁で落語家が傘をさし、二人が寄り添って帰るところも見えてきた。歌に込められた落語家の夫婦愛をようやく理解できた私は、とても温かい気持ちになった。

あの料亭での時間を思い出すたびに、今でも何とも言えない感慨深い気持ちになる。最近、日本では「爆買い」という言葉をよく耳にすると言う。私も例外ではなく、買い物用のスーツケースを二つ準備し、他の多くの中国人と同じように「大人買い」を超える量の買い物を楽しんだ。しかし、急ぎながらいくつものデパートを回った後、疲労感が強く残った。せっかく日本に来ても、爆買いだけしかしないなら、忘れがたい思い出を作ることは難しいと思う。日本へ行く時には、人の心を引き付ける場所にも目を向けてみてほしい。

誰でも好きな日本のドラマやアニメがきっとある。その舞台となった所へ行くのはどうだろうか。鎌倉高校前の踏切で、「スラムダンク」のエンディングソングのような写真を撮る。香川県高松市の防波堤へ行き、「世界の中心で、愛を叫ぶ」で二人が見つめていた夕日を眺める。「ラブストーリーは突然に」と一緒に、リカちゃんと完治くんがデートした代々木公園を歩くなら、リカちゃんの優しい笑顔がそこにはあるかもしれない。

感性を働かせて「自分の知らなかった日本」を味わうと、見落としてしまいがちなものを得られるはずだ。私にとって、それは大将や女将さんとの会話であり、その料亭の通りの独特な雰囲気という記憶だ。

一週間の旅行は瞬く間に過ぎ去った。荷物も、そしてそれ以上に思い出もいっぱいだった私は、帰国の飛行機に乗るときに、「また来るで」と心の中でつぶやいた。(編集/北田

※本文は、第十二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「訪日中国人『爆買い』以外にできること」(段躍中編、日本僑報社、2016年)より、張凡さん(合肥優享学外語培訓学校)の作品「浪花恋しぐれ」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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