「北朝鮮」「FTA」めぐり、米韓のあつれきが表面化=トランプ大統領の“韓国侮辱”姿勢に米国内からも懸念「文政権を“親中”に追い込む」

八牧浩行    2017年9月7日(木) 5時20分

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米トランプ政権と韓国の関係が微妙な状態に陥っている。トランプ大統領は米韓FTAの破棄の可能性を示唆。さらにトランプ氏は文韓国大統領の対北朝鮮融和策を批判、北朝鮮の挑発の中、で由々しい事態となっている。資料写真。

トランプ政権と韓国の関係が微妙な状態に陥っている。トランプ大統領は米韓自由貿易協定(FTA)の破棄の可能性を示唆し、閣僚レベルの会議が協定脱退の勧告を全会一致で採択した。さらにトランプ氏は文在寅韓国大統領の対北朝鮮融和策を批判、北朝鮮の挑発が続く中で由々しい事態となっている。

米韓外交筋によると、米通商代表部(USTR)が米韓FTAの再交渉を申し入れたのに対し、韓国側が8月21日に拒絶したことで米韓のいさかいに火がついた。トランプ氏は米韓FTAが2012年に発効して以来、米国の対韓貿易赤字が倍増しているとして「ひどいことで、これはわが国を破壊してしまう」とツイッター発信した。

大統領は脱退に当たって議会の承認を得る必要がない。同協定によれば、いずれか一方の当事国が脱退の意思を通知すれば、18日後に脱退が発効する。脱退通知を受けてから、いずれの当事国も協議の申し入れを行うことができ、交渉を始めることが可能となる。今回の場合、韓国が米国の交渉申し入れを拒絶したため、米国が反発。まず脱退を通告することによって、韓国が再交渉を求めざるを得ない立場に追い込むことを、トランプ大統領は狙っていると同筋は見ている。

これに対し、議会上下両院議員らはトランプ氏に対し、北朝鮮の核・ミサイル開発問題を巡る緊張の高まりを踏まえ、米韓FTAを破棄しないよう要求。下院歳入委員会および上院財政委員会の両委員長と有力民主党メンバーは9月5日の声明で、北朝鮮による6回目の核実験は「米韓の強力な同盟関係が極めて重要であることを改めて明確にした」と指摘。「米韓FTAは米韓同盟関係の中核である」と訴えた。

さらに米国商工会議所のトム・ドナヒュー会頭は声明で「拙速で無責任な」FTAの破棄に反対すると表明した。「破棄によって米国で創出される雇用は皆無で、反対に多くの雇用が失われることになる」と指摘した上で、米政権と経済界の関係悪化につながると警告。「皮肉なことに、大統領選でトランプ氏に投票した米中部の各州が、破棄によって農産品や製品の輸出が落ち込み、痛手を被ることになる」との見解を示した。

ところが9月3日の北朝鮮核実験から数時間後、トランプ氏は北朝鮮を非難するツイートを投稿した上で、「私が言っていたように、韓国も北朝鮮との融和に向けた話し合いがうまくいかないことに気づきつつある。彼ら(北朝鮮)に理解できるのは一つだけだ」と、韓国にも批判の矛先を向けた。米韓外交筋によると、トランプ氏は対話を重視する文氏の態度に不満を持っており、米韓トップの温度差が改めて表面化した格好だ。

米韓関係の「微妙なあつれき」について専門家の多くは「米韓同盟を弱体化させかねず北朝鮮利す結果につながる」との懸念。「韓国は中国とFTAを締結しており、親中的傾向の強い文政権が『米国を頼りにできない』と、さらに中国寄りになるのではないか」と危惧する声もある。さらに民主党の有力議員は「トランプ氏の貿易に関する見方、交渉、政策の非一貫性、脅し、その他の侮辱は、米韓同盟を破壊している」と警鐘を鳴らしている。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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