<コラム>教室で一番静かなのは日本人、韓国人は…

木口 政樹    2017年8月22日(火) 19時50分

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「人に軽く見られてはならない、ばかにされてはならない」という教育をうけてこちら韓国の人は育つ。日本ではどうだろうか。「人の迷惑になるようなことはするな」。これが第一の教育だろう。写真は韓国。

「マンマンハゲ ボイジマ!」。こういう教育を受けてこちら韓国の人は育つ。つまり「人に軽く見られてはならない、ばかにされてはならない」といった意味である。日本ではどうだろうか。「人の迷惑になるようなことはするな」。これが第一の教育だろう。

韓国と日本、これら二つの言葉を見比べてみると、韓国の方は自分を強く保てという教えであり、日本の方は他人を大事にしろという教えであることが分かる。「おもてなし」などにもつながってくる概念であろう。

韓国の方が生き方の面でよりアグレッシブな傾向があり、自分を強く出そうとする積極的な姿勢がみられる。日本の場合は「人の迷惑にならないよう」に生きるということで、自分を強く出すというよりは、どちらかというと消極的な方向性であり、周囲の目を気にした神経質な立ち居振る舞いになりやすいことは容易にうなずける。

モスクワでロシア語を学んだことのある友人の韓国人教授が言う。

「教室で一番うるさいのは誰だと思う?」

「中国人?じゃなかったら韓国人?」と私。

「いや、ペルーなど南米の国から来ている留学生だったねえ。じゃ、隅っこにいて一番静かにしている学生は?」

「日本人かい?」

「ピンポーン。正解正解。ちなみにその次に静かなのは韓国人だね」

南米から来ている学生は、ロシア語を習ったその日から片言のロシア語で先生に質問したり友達とロシア語でしゃべったりするから騒々しいことこの上ない。しかし1カ月後にはもうあの難しいロシア語をかなり流ちょうに操るようになり、半年後にはもうぺらぺらになっているそうだ。

日本人と韓国人は、かなり長いことロシア語をしゃべらない(しゃべれない)という。体感的には、韓国人は結構うるさい方じゃないかと思うのだが、実際に韓国人から直接聞くところによれば、上の例のように韓国人も結構隅っこにいて消極的な性格なんだとか。

教室の場では借りてきた猫のように静かにしているのかもしれないが、もう一度冒頭のマンマンハゲに戻ると、人に軽く見られてはならないという考え方は、自己アピールを積極的に行う傾向につながり、ひいては「ポムセン ポムサ」というスタイルにもつながっていくのかもしれない。「ポムセン ポムサ」というのは、形が大事、見栄えが大切といった意味で、つまるところは「格好をつける」といった意となる。

格好つけるというのは、一般的にはマイナスの意で使われる言葉であろうけれど、人間、この世知辛い世の中で生きていくうえで、自分の品位を保ち「軽く見られないこと(マンマンハゲ ボイジマ)」が、処世術としてはかなり重要な教えなのではなかろうかとこの頃しきりに思う。消極的でどこかひ弱そうな、すぐにもくずおれてしまいそうな控えめな生き方も魅力的ではあるけれど、自己の品位を保ち毅然(きぜん)とした生き方をする方が、困難ではあろうが価値ある「生」であるような気もするのである。

この稿の最後にちょっと注を入れたい。言うまでもないことだが、韓国の全ての家庭が一律に「マンマンハゲ ボイジマ」としつけしているわけではない。うちでは「他人様の迷惑になることは控えなさい」という教えだった、という韓国の友人もいる。

日本だって、皆が皆、他人様の迷惑にならないことを第一義としてしつけする家庭ばかりでもないと思う。ある家庭は整理整頓かもしれないし、ある家庭は浪費をするな、かもしれない。物書き(作家)は、こうした「文化」や「習慣」に関する文章ではえてしてその象徴的な面だけを強調して書いてしまう傾向がある。

私の文章だけに限らず、お読みになっている読者の方々はこのあたりは常に注意して読むべきである。確かにそれもあるけど、反対もあるよ、と。そういう読み方をされた方が、筆者としては安心してものが書けるというものである。今後ともそんなスタンスでお頼み申します。

■筆者プロフィール:木口政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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