「日本が負けるの!」と笑顔でバンザイ、ドラえもんは反日か?=作品を通して語る作者―中国コラム

人民網日本語版    2017年8月19日(土) 6時30分

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最近放送されたドラえもん夏の1時間スペシャル「ぞうとおじさん」では、のび四郎おじさんがのび太の家にやって来て、子供だった第二次世界大戦中に、動物園のゾウが戦時猛獣処分を受けたという話をする。

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最近放送されたドラえもん夏の1時間スペシャル「ぞうとおじさん」では、のび四郎おじさんがのび太の家にやって来て、子供だった第二次世界大戦中に、動物園のゾウが戦時猛獣処分を受けたという話をする。動物園は、空襲で檻が破壊された際の猛獣逃亡を視野に入れて、殺処分を決定した。のび太とドラえもんはその話を聞いて、腹を立て、タイムマシーンに乗って戦争中の時代に行き、動物たちを救おうとする。そして、飼育員が毒入りのジャガイモをあげたものの、ゾウが毒のにおいを嗅ぎ分け、食べようとしないところに遭遇した。しかし、やって来た軍部・伍長はすぐに、「日本にとっては今は大事な時で、多くの兵隊が祖国のために身をささげている」と、ゾウをすぐに殺すよう動物園の園長らに迫る。その時、のび太とドラえもんが軍関係者に、「戦争なら大丈夫、もうすぐ終わるから。日本が負けるの!」と笑顔で話す。(文:黄不会)

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このシーンは日本で大きな論議を巻き起こし、SNSでは「洗脳しようとしている」、「反日だ」、「日本を侮辱している」などの、批判の嵐となった。また、「日本が戦争に負けるって、笑いながら言うこと?」、「アニメであるドラえもんが、子供たちにそのような考え方を植え付けていいの?」などと疑問を投げかける声も上がっている。

「ドラえもん」の長年の大ファンである筆者の中では、このようなシーンも想定内だ。多くの人は、「ドラえもん」は単なる平凡な子供向けアニメではなく、日本を代表する名作子供向けアニメであるという事実を忘れている。

藤子・F・不二雄作の「ぞうとおじさん」は、てんとう虫コミックス5巻に収録されており、これまでに2度アニメ化された。

どの回にも、「日本が戦争に負ける」という言葉が出てくるものの、前2回では、ドラえもんとのび太は微笑んでいるだけで、手を挙げて喜んだ様子でそう話すことはなかった。そのようにしているのは、原作漫画と今回の夏の1時間スペシャルだけだ。

また、前2回と異なるのは、ゾウに命を救われた軍部・伍長が、「わしが間違っていた。本当はわしも動物を殺したくない」と話すシーンだ。このシーンは、戦争が人の心に大きな傷をもたらすという日本人の思いを別の角度から表現しており、戦争をしてはならないという決意が示されている。

このようなシーンの実現に、チーフディレクター・大杉宜弘さんが貢献している。最近の対談で、大杉さんは「戦争という重いテーマを『ドラえもん』で扱うのは相当の覚悟と勇気がないとできないと思うんだよね。よくチャレンジしたと思う」と率直に述べている。

「ドラえもん」の作者である藤子・F・不二雄は真の天才。スーパーロボットやミステリー、SF、マジック、タイムスリップなどの、今流行しているほぼすべての要素が「ドラえもん」の劇場版には盛り込まれており、想像力を最大限働かせたアニメーション映画と言われている。しかし、藤子・F・不二雄はそれだけでは満足しない。それらの要素だけでは、単に「すばらしい」とか、「おもしろい」とかしか言えず、「偉大」とは大きな距離がある。それらの作品を通して伝えられる価値観にこそ、藤子・F・不二雄の志が詰まっており、ドラえもんが「偉大」と言われる理由でもある。

優秀なクリエイターと偉大なクリエイターにはどんな違いがあるのだろう?筆者は、現実や商業利益のために、妥協して小さくまとまることなく、自分の影響力を活用して社会で声を上げたり、弱者のために声を上げたり、本当の意味で大切で素晴らしいもののために声を上げたりできるのが、偉大なクリエイターだと考えている。

自由、平等、愛などは、ありふれた言葉であるものの、依然としていつでも人々の心を打つことができる。その根本的な理由は、それらこそが本当の意味で美しいものだからだ。そして、映画のセリフにあるように、いいものは決して死なないのだ。(提供/人民網日本語版・編集KN)

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