<直言!日本と世界の未来>「地球市民」を生み出す教育を=衝撃の世界競争力ランキング―立石信雄オムロン元会長(直言扁16)

配信日時:2017年8月6日(日) 5時0分
「地球市民」生み出す教育を=衝撃のランキング―立石オムロン元会長
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国際経営開発研究所の世界競争力ランキングを見て、私はいさささかショックを受けた。その根底にある問題として様々な価値観の変化や崩壊があるのではないか。そう考えた時、社会を構成するサブシステムである教育機関への期待は大きい。
スイスを拠点とする国際経営開発研究所の世界競争力ランキングを見て、私はいさささかショックを受けた。同研究所が公表した2017年度版「世界競争力年鑑」報告書は競争力を高める体制が最も整っている国と地域をランク付けしたもので、同研究所の世界競争力センター研究グループが1989年より毎年発表している。

今年のトップは香港。2位のスイスは安定の地位を築き、中国が順位を上げた一方で、米国は新政権の誕生による先行きの不透明感の影響を受け、3位に後退。1994年に総合第3位たった日本の順位は26位にまで落ち、中国本土(18位)の後塵を拝している。分野別の順位を見ても日本は軒並み順位を下げており、日本の状況に対して国際社会から厳しい評価が下されている。
 
これにはバブル崩壊後の日本経済の低迷が大きく影響しているのは間違いないが、その根底にある問題として様々な価値観の変化や崩壊があるのではないかと思っている。そう考えた時、社会を構成するサブシステムである教育機関への期待は大きい。

 私は常々「教育機関は社会から隔絶した存在ではなくその一部であり、相互に交流と融合を図るべきだ」と考えている。日本の教育システムでは、小学校から大学卒業までの16年間、人生の最も感動に満ちた時間を学校という社会の中で過ごす。ところが、少し厳しい見方だが、これまでこの学校という教育機関が社会から隔絶した一種の閉鎖社会を構成し、結果的に自己中心的な社会観にとらわれた多くの大人を生み出すことにつながらなかっただろうか。いま世の中はどのような構造になっており、どのような職業があり、自分の人生にとってどんな選択肢があるのか、親でさえ自らの仕事や社会的役割を子供に説明できないでいる。それほど世の中が複雑化、多様化してきたとも言えるが、だからこそ、人生の中で最も感性豊かな時期に現実の社会から学ぶことが重要なのである。

 日本においても徐々に改革に向けた新たな動きがあることは喜ばしい。教育改革国民会議の報告でも、教育機関と地域社会とのつながりや職業観、勤労観を育む教育の重要性に触れており、早急に具体的な施策となることを望みたい。特に大学は、もっと地域社会とのつながりを意識する必要があり、地域への公開講座や民間企業とのアライアンスを行う中で学内に外部の風を吹き込むことが大切である。また、インターンシップの積極的な導入によって学生にもっと勤労体験をさせることも必要であろう。
 
そして、冒頭で日本の競争力に触れたが、これからの時代を担う21世紀の若者には、むしろ単に日本国民としての意識ではなく、いわば「地球市民」としての意識が求められる。従って、これからの教育にも、市民一人ひとりが高い知性と世界観、洞察力を持って、自らの価値観、生き方を追求できる「地球市民」としての市民社会づくりに貢献していくことが求められるのである。

立石信雄(たていし・しのぶお)1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人・藤原歌劇団・日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。
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