<コラム>ママ視点のインバウンド、銀座で中国人にインタビューしてあることに気が付いた

北村愛子    2017年12月1日(金) 16時50分

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昨年長く勤めていた会社を辞めた。理由はいろいろあったが、上海で起業していた学生時代からの友人が東京で会社を立ち上げる。「手伝わないか?」と言われたことが大きかった。聞くと拡大する中国人旅行客向けのアプリだという。写真は銀座を走る観光バス。

【大企業を辞めて中国人のインバウンドベンチャーへ】

昨年長く勤めていた会社を辞めた。理由はいろいろあったが、上海で起業していた学生時代からの友人が東京で会社を立ち上げる。「手伝わないか?」と言われたことが大きかった。聞くと拡大する中国人旅行客向けのアプリだという。

年々増加する訪日中国人を横目にインバウンド事業に興味があった。会社を一から立ち上げるという事にも興味があった。またなんと言っても、彼の立ち上げた東京のオフィスが私の自宅から徒歩で通えるという。

20代のころ上海で働いていた時、周囲から危険だ危険だと言われながら、毎日自転車通勤していた。日本へ帰国し、働きながら子どもを育て、いかに働く母親にとって、会社と自宅が近いこと、子どもを会社に連れていける気軽さが必要かを感じていた。仕事と子育てに追われ、自分の趣味や運動に充てる時間も取れていないことにも不安を感じていた。20代のころ、単身上海に渡った時のように、思い切って新しい世界に飛び込んでみようと思い、家族の反対を横目に安定した大企業を辞めた。

【インバウンドアプリから見えた景色】

中国では現在、スマートフォンの普及により現金を持ち歩かなくともアリペイ、ウィチャットペイによる支払いが主流である。T-MALL(天猫:アリババグループが運営するECサイト)が仕掛ける“W11ダブルイレブン”と呼ばれる11月11日の大型販売促進キャンペーンでは、今年なんと2兆8000億円が取引された。

中国ではガラケーからスマートフォンという日本流の携帯市場ではなく、一気にスマートフォン市場が拡大し、都市部のほとんどの人はスマートフォンを持っている。そしてスマートフォンで食事のデリバリーから、交通手段への支払い、公共料金の支払いまで身の回りのすべてを決済することに慣れてしまっているのだ。

一方、日本へ来る中国人旅行者への環境はどうであろう。ローソンを代表に中国人客をターゲットする日系企業はアリペイやウィチャットペイを導入し、百貨店などは中国人が集中する店舗などには中国人販売員まで雇って対応している。

日本で買い物を楽しむ旅行者の大部分は中国を代表とするアジア圏の方々であり、特に中国人の買い物消費額は突出していることは周知の通りだが、中国人が日本でこれほど多くの商品を購入しているにも関わらず、その販売方法は中国人の慣れているオンラインではなく、未だ店頭販売型のオフライン市場なのである。私の友人が狙ったのはその中国人旅行者が日本で消費していると言われているオフライン1兆円市場(※宿泊費を除く、飲食、購買、体験費用)の一部をオンラインで購入できるアプリの開発であった。

【より快適な日本旅行の体験を目指して】

私が上海に住んでいた時、日本へ帰ってくるたびに同僚の中国人から大量の「欲しい物リスト」を渡された。現在も、中国に住む友人たちは出張のたびに、周囲の中国人から日本で買ってきて欲しい物のリストを渡されるという、そんな中国人独特の頼まれ買いにも対応できるようにした。

アプリのインタビューのためよく銀座に行っていた時、あることに気付いた。ベビーカーや子連れの家族が意外と多いということ、そして幼児・小学生くらいの子どもは母親が買い物の間、父親とひたすらスマホゲームやゲーム機に熱中していることだ。

この景色どこかで見たことがある。そうだ、豊洲にあるキッザニアのオープンを待つ子どもたちの長い列だ。皆一様にスマホや任天堂スイッチのようなゲーム機をのぞき込みながらオープンを待つ姿を異様に感じたことを覚えている。

私は同じ年ごろの子どもを持つ親として思った。この銀座には屋上公園を持つ百貨店がいくつかあり、子どもが楽しめるスペースもある。少し歩けば、遊具を擁した公園もある。日本橋エリアで企業の展示ルームを見るのも良い、日本の紙すきを体験ができる施設もある。幼児期から座学を中心とした勉強に励む中国の子どもたちに、東京の郊外にある大きな公園や自然の中で思いっきり体を動かして遊ばせることも、今後アプリで紹介・提供できるかもしれないと。

聞けば、中国では都市部を中心に専業主婦も増え、子どもの教育に熱心であるという。親子で日本の幼稚園交流会に参加したという友人もいて、日本の幼児教育に強い関心を持っている。日本のベネッセが展開する幼児通信教材「しまじろう」は中国でも“巧虎(チャオフー)”と呼ばれ大人気だ。

日本発の「もったいない」精神は全世界で“MOTTAINAI”という言葉のまま広がっているし、日本でも大人気の“もったいないばあさん“という絵本は中国語でも翻訳されている。歴史や政治など日中間にはいろいろな問題が存在するが、子どもに関して言うと日本人の子どもの礼儀正しさや自立心には概ね好意的な、というか学ぶべき点として報じていることが多いと思う。

中国人ママは日本の良質なモノだけでなく、日本人のオモテナシのルーツとも考えられる幼少期の教育に興味を持っているし、その体験もしてみたいと考えている。インバウンド業界に身をおいてまだ2年にも満たない筆者であるが、今後ますます拡大すると想定される中国からの旅行者、特に親子向けインバウンド商品を母親の視点から紹介していきたいと思う。

■筆者プロフィール:北村愛子

1976年静岡県西伊豆生まれ。大学時代に1年間交換留学で上海、その後仕事で3年半、上海に滞在。日本帰国後、中国人社長の秘書兼広報として約10年勤務。2016年4月に友人の中国人向けお買い物アプリの立ち上げに参画し、現在に至る。

■筆者プロフィール:北村愛子

1976年静岡県西伊豆生まれ。大学時代に1年間交換留学で上海、その後仕事で3年半、上海に滞在。日本帰国後、中国人社長の秘書兼広報として約10年勤務。2016年4月に友人の中国人向けお買い物アプリの立ち上げに参画し、現在に至る。

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