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「ホタルと一緒に過ごすようになって、太陽の光とエネルギーに自分がだんだんと満たされていくのを感じた」−これは、漫画絵本「屋根の上のホタル」に登場する一節だ。
「ホタルと一緒に過ごすようになって、太陽の光とエネルギーに自分がだんだんと満たされていくのを感じた」−これは、漫画絵本「屋根の上のホタル」に登場する一節だ。このページには、傘を持って道を歩く女の子の挿し絵が描かれている。これまでに、同書は、レビューサイト「豆瓣」で、9.3ポイントという高評価を獲得している。同書と同じころに出版され、内容も似通っている「あなたに出会えてよかった」や「白昼夢の星」に対する評価も、ともに8ポイントを上回る。数年前に輸入・出版された「羊のセルマ(中国語書名:幸福)」などの作品を含め、この種の絵本作品の中には、読者から大好評を得ているものが数多くある。中国新聞網が伝えた。
上述の作品と、数年前から各種メディアで取り上げられている児童絵本とは、同じ種類のものであるとは言えない。記者の概算統計によると、上述の作品は総じて、さまざまな特徴のある挿絵が中心となっており、一言あるいは少しの言葉が添えられているもの、フィーリングだけを伝えているもの、心温まる物語を伝えているものなどがある。詳しく分析したところ、このような絵本図書に対する読者のコメントには、「温かさ」、「小清新(控え目で清々しい)」、「哲学・思想」などのキーワードが頻繁に登場する。スタイルが似通ったこれらの作品を「癒し系」絵本と総称する人もいる。
「あなたに出会えてよかった」の企画・編集を担当した王琳氏は、「同書は、初出版から1カ月もたたないうちに第2版が出版された。サイン即売会を開催したときには、わざわざ地方から駆けつけてくれた読者もいて、長蛇の列ができたほど」と話した。
「羊のセルマ」は、かなり以前に出版された絵本で、セルマをめぐる様々な物語が描かれている。セルマは、日々の生活を大切にして、幸福を味わいつつシンプルに暮らしている。同書はおそらく、読者の心を温かくする「癒し系」であると同時に、「哲学・思想」も盛り込まれている。同書を出版した新経典文化有限公司マーケティング編集部の樊従祥氏は、「この本は、初版以来繰り返し重版されている『癒し系』絵本であり、特にここ数年間で人気がさらに高まっている」と紹介した。
では、「癒し系」絵本がどうしてこれほど人気があるのだろうか?長江文言出版社マーケティング編集部の小符氏は、次のとおり指摘した。
「読書スタイルが細分化された現代において、挿絵やイラストが入った読書媒体は、よりスピーディかつ手軽な読書にマッチしている。また、ますます巨大なストレスを抱える現代の人々、特に大都市で奮闘する人々は、絵本や著者が語る物語中から、共鳴する点、さらには癒される点を見出したいと思っている」。
王琳氏も、このような観点に賛同しており、「『癒し系』絵本は、テンポが速くストレスが大きいという現代人の生活の特徴にマッチしている。これらの本に用いられている文字によってほのぼのとした気持ちが生まれ、挿絵はとても美しく、ポジティブなエネルギーを読者に与えてくれる」とコメントした。
線のなめらかさとストレートな絵が、軽いタッチで清々しい雰囲気の文字や物語とよく合い、それらが読者を魅了する「最大の武器」となっていることは間違いない。たとえば、「あなたと出会えてよかった」の中で、子熊がニンジンを植えるシーンが登場する。子ウサギが、「なぜそんなことをしているの?」と子熊に尋ねると、子熊は、子ウサギにニンジンの味見をさせながら、「ニンジンが熟したら、『君に僕の家に遊びに来て』、って誘う理由ができるから」と答えた。挿絵と文字はいずれも、ほのぼのとした温かさに満ち溢れている。
当然のことながら、読書体験は気軽なものだが、これは必ずしも「本の内容は深いものではない」ということを意味しているわけではない。「癒し系」絵本によって、人々は、普段見逃しがちな素晴らしい観点に注目し、日々の生活を再び見直し、心から慈しむことが全てにおける第一歩であることに気づく。まさに、「あなたに出会えてよかった」の著者・白峻氏が、「この本には、温かくて美しい小さなストーリーを数多く描いた。読者の皆さんと美しさを分かち合い、それが伝わることを願っている」と述べた通りだ。(編集KM)