未来は全てのモノとコトがネットで結びつく?「日本のモノのインターネットの父」が答える―中国メディア

人民網日本語版    2017年7月6日(木) 13時50分

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現在、「モノのインターネット(IoT)」という言葉は既に広く知られるようになっている。路線バスの交通カードやスマート宅配ボックス、シェア自転車など、モノのインターネットは人々の生活の各分野に浸透している。資料写真。

現在、「モノのインターネット(IoT)」という言葉は既に広く知られるようになっている。路線バスの交通カードやスマート宅配ボックス、シェア自転車など、モノのインターネットは人々の生活の各分野に浸透している。では、モノのインターネットにさらなる進歩の余地はないのだろうか?

第21回中国国際ソフトウェア博覧会・国際モノのインターネット応用・発展サミットで、「日本のモノのインターネットの父」と称される、東洋大学の坂村健教授が自身の研究成果を紹介し、モノのインターネットはさらなる大きな可能性を秘めていることを教えてくれた。

中国国家工業情報安全発展研究センターが主催した同サミットに、中国国内外のモノのインターネット産業の学者や専門家、優秀企業などが集まった。

坂村教授は現在、東洋大学の情報連携学部の学部長、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所の所長、TRONプロジェクトのリーダー、uIDセンターの代表を務めている。坂村教授は、リアルタイム性に優れたオープンアーキテクチャの計算機システムの技術体系TRONが評価され、2015年5月、ジュネーブの国際電気通信連合(ITU)本部で開催されたITU150周年記念式典において、「ITU150周年賞」を受賞した。5センチほどのIoT-Engine(モノのインターネット設備の標準開発プラットフォーム)と、同じ大きさほどの通信モジュールを身の回りのあらゆる「モノ」に埋め込み、それらを無線ネットワークで結び、「モノ」が人の指示で作動するようにするというのが、坂村教授が東洋大学で主に研究している内容だ。

「IoT-Engine」は、坂村教授が1984年に研究を始めた身の回りのあらゆる場所にコンピューターや情報機器を遍在させ、相互に有機的に連携するユビキタスコンピューティングの構築を目指すプロジェクト「TRON」を基礎に開発された。現在、TRONは世界でスマホやデジタルカメラ、自動車のエンジン、セットトップボックスなどに応用されている。また、日本では、大気汚染のモニタリングにも応用されている。低価格で高性能の組み込みシステムの代表的存在であるTRONは、世界のCPU (中央処理装置)、オペレーティングシステム(OS)市場のシェア60%を占め、6つの国や地域の半導体メーカー7社は、「IoT-Engine」の商業化に意欲を示している。TRON研究プロジェクト推進のために立ち上げられたトロンフォーラムには、グーグルやマイクロソフトなども加盟しており、世界中の193の組織が会員となっている。そして、構築しているTRONのプロジェクトには、世界中のさまざまな国や地域の政府、CPUメーカー、OSメーカー、学術機構など、400団体が参加しており、共にその発展を促進している。

10年前に、TRONには中国の学者も注目していた。中国科学院は、TRONの専門研究開発を行ってきた。TRONの中国における発展について、坂村教授は、「中国工程院のメンバー李国傑氏はTRONの中国における発展において重要な役割を果たしてくれた。中国において、IoTの応用は問題にならないものの、基礎研究という分野ではまだ研究が進んでいない。TRONは、基礎開発に属し、近い将来TRONが中国で、本領を発揮できると信じている」としている。

もちろん、坂村教授は何の根拠もなくそのように分析しているのではない。中国工業・情報化部(省)が発表しているモノのインターネットの16-20年の発展計画では、20年までに、モノのインターネット産業を1兆5000億元(約24兆7500億円)規模以上に成長させ、10の特色ある産業集中エリアを構築することを目標に掲げている。その他、市場調査会社・IDCのレポートは、20年までに、中国の製造業企業のモノのインターネットへの支出が1275億ドル(約14兆4075億円)に達し、今後5年の年間平均成長率(CAGR)は14.7%と予想している。

20年の東京五輪でも、TRONの影を目にすることができそうだ。坂村教授は、TRONを利用して開発したIoTおもてなし プラットフォーム「OPaaS.io」が、同五輪に合わせて訪日する外国人旅行客に、登録した情報と交通系ICカードを紐づけると、店舗や訪問先等の端末にその交通系ICカードをかざすだけで、その時その場その人に適した「おもてなしサービス」を受けられたり、自分の母国語による解説を閲覧できたりするサービスを提供することを明らかにした。同プラットフォームは、五輪開催後も、日本のさまざまなシーンに応用される計画という。

その他、坂村教授は、スマートシティを実現するためのプラットフォーム「CPaaS.io」の研究も進めている。同プラットフォームは、視覚障害者に、現在地を伝えたり、スマホなどの電子機器の利用を補助したりするサポートを提供する、日本の高齢化問題を解決するためのプラットフォームをベースにしている。

モノのインターネット技術が進むにつれ、安全性が課題になっている。その点、坂村教授は安全性を考えて、組み込み機器メーカーのクラウドや、各種アプリケーションを連携させる基盤「IoT-Aggregator」を開発し、権限設定ができるようにしている。坂村教授は、「『IoT-Engine』は、ダウンストリームノードであるため、攻撃を受ける可能性は非常に低い。もちろん、重要なデータはクラウドに記録しておけば、危害を受ける可能性をもっと低めることができる」とし、「安全技術の向上は一面に過ぎず、政府や民間、ユーザーが力を合わせてモノのインターネットの安全性の問題を解決するほうがもっと重要」との見方を示した。

将来的には、すべてのモノとコトがインターネットで結びつくIoE(Internet of Everything)が主流になるのだろうか?坂村教授の構想では、主流になるのは「IoS(The Internet of Services)」だ。そして、「モノのインターネットの精華は、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を通して、物体の自発的な連携を実現すること。IoSの本質は、社会の各サービスをオープンなAPIを通してつなぐことだ」とし、「プログラミングを通して全てをコントロールできる時代がもうすぐやって来る」と強調した。(提供/人民網日本語版・編集KN)

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