「世界中の映画ファンが支持してくれ嬉しかった」トランプ米大統領に抗議しアカデミー賞授賞式ボイコットのイラン国民的女優―東京で受賞作公開会見

八牧浩行    2017年6月11日(日) 9時40分

拡大

今年度の米アカデミー賞の外国語映画賞を受賞したイラン映画「セールスマン」の主演女優アリドゥスティさんが初来日し会見。イスラム諸国からの入国を制限するトランプ氏の政策に抗議し、1月に行われた授賞式に監督とともに出席をボイコットし注目された。写真は会見風景。

(1 / 6 枚)

2017年6月9日、今年度の米アカデミー賞の外国語映画賞を受賞したイラン映画「セールスマン」の主演女優タラネ・アリドゥスティさん(33)が初来日し日本記者クラブで会見した。イランなどイスラム教徒が多い7カ国からの入国を制限するトランプ米大統領の政策に抗議し、ハリウッドで1月に行われた授賞式に監督のアスガー・ファルハディさんとともに出席をボイコットし、注目された。

その他の写真

アリドゥスティさんはボイコットの理由について、トランプ氏のイスラム諸国からの入国制限は人種差別であり、アカデミー賞授賞式会場では多くの国の映画人やファンが抗議の声を上げてくれたと指摘。「参加するより効果があったように思う」と振り返った。映画「セールスマン」は、6月半ばから全国で順次ロードショー公開。

この映画は婦女暴行事件を発端に夫婦間に生じた軋轢を描いたミステリー。米戯曲「セールスマンの死」のテヘランでの舞台に出演するイラン人夫妻が事件に巻き込まれる。15歳から数々の映画で主演している国民的女優アリドゥスティさんは妻役を好演。カンヌ映画祭はじめ他の有力映画祭の賞も獲得した。

記者会見での発言は次の通り。

――トランプ氏の人種差別的な方針に反発して、ハリウッド行きを拒否したことについて?

「映画を通じて世界の人々はお互いを知ることができると思う。ファルハディ監督は2回目のアカデミー賞受賞で喜ばしいことだが、トランプ氏が入国制限をしたので、一緒にハリウッド行きを拒否した。イスラム諸国からの入国制限は人種差別だと思う。授賞式会場に集まった多くの映画人や世界中の人々が、われわれのために声を合わせて発言し支持してくれたことは嬉しかった。参加するより効果的だったと思う。その後、トランプ大統領の発令が保留になったのは喜ばしい」

――イランでの女性の進出について?

「社会や映画界で女性は様々に活躍している。海外での審査委員になったりしており、社会進出は目覚ましい」

――映画「セールスマン」は女性への性的暴行がテーマとなっているが、この問題をどのようにとらえているか?

「世界共通のグローバル的な課題だと思う。法律を変えるのも重要だが、より大切なのは文化的問題であり、意識を変えるべきだ。性的暴行を受ける女性は被害をなかなか口にできないので、法律とか警察に助けを求めたりできない。第一ステップは恥を感じたり、周りの目を気にしたりする気持ちをやわらげること。(心に)傷が残るので犠牲者を人として守っていくべきだ。まだまだ議論して対策を講じる必要がある」

――アメリカ映画ではイランをファナティック(扇情的に)に描くことが多い。この問題についてどう考えるか?

米国の映画やメディアはプロパガンダ的で、ステレオタイプのものが多いと思う。商業映画なので誇張があるのは分かるが、イランの実際の姿ではない。現在、インターネットなどを通じて本当の姿や考え方がシェアされており、リサーチすれば多くの情報が手に入る。私たちは本当のことを知る権利がある」

――イランでの映画作りに制約はあるか?

「脚本と完成時の2回許可が必要だが、今回の映画ではチェックは一切なかった。政治家と芸術家は互に悪意を持たず、うまく対話しており、これからもっと近づいていくと思う」

――1979年の米国のイラン大使館員人質事件を描きアカデミー賞を受賞した米映画『「アルゴ』(2012年)について?

「この事件発生当時、私は生まれていないが、映画『アルゴ』を観ている。ナレーションに違和感があった。娯楽映画なので誇張はあると思う。このような実際の事件を扱った映画は、黒白を決めつけるのではなく、グレーに(あいまいな点を)描かないと正確に伝わらないと思う」

――初めての日本の印象は?

「とても友好的で、街はテヘランと同様混んでいるが、皆さん笑顔でストレスをためていないように見える。日本の『おもてなし』は本当に心地いい。イランからも多くの労働者が日本に来ているが、みんな帰国すると『いい思い出しかない』と言っている。居心地がいいのでまた来たいと思う」(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携