韓国財務副大臣「資金フロー管理が必要」、日韓スワップ協定再開訴える―東京で「アジア通貨危機から20年」シンポジウム

八牧浩行    2017年4月14日(金) 5時10分

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アジア開発銀行(ADB)などは、1997年の「アジア危機から20年」をテーマに東京でシンポジウムを開催。出席したインチャン・ソン韓国財務副大臣が「資金フロー管理が必要」と述べ、日韓スワップ協定の重要性を示唆、注目された。写真は同シンポジウム。

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2017年4月13日、アジア開発銀行(ADB)と同銀研究所(ADBI)は、1997年の「アジア危機から20年」をテーマに東京でシンポジウムを開催した。日本、韓国、中国、タイ、マレーシア、インドネシアなどアジア各国の財政、通貨、金融などマクロ政策 にかかわる政策当局者や大学、ンクタンクなどの研究者多数が出席し、「アジア通貨危機の教訓」「今後の課題」などを話し合った。出席した韓国財務副大臣が「資金フロー管理が必要」と述べ、日韓スワップ協定の重要性を示唆、注目された。

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会議の冒頭、ADBIの吉野直行所長(慶応大名誉教授)が、「20年前のアジア危機は金融の成熟度、通貨、流動性の3要素のミスマッチが原因だった」と指摘した。アジア各国の政策当局者は「アジア通貨危機からの教訓」について報告。教訓として(1)国内貯蓄を高めること(2)銀行部門の安定性(3)起業家や中小企業などのイノベーション―などを事前に確保しておく必要があるなどと訴えた。

当時、特に激しい通貨危機に見舞われた韓国の実情と今後の課題について、インチャン・ソン韓国財務副大臣が報告した。「当時の韓国国民総生産(GDP)伸び率は7%程度で、公的債務も少なく、韓国のマクロ経済は悪くなかった。経常赤字は拡大基調だったが、危機的な状態ではなかった」と指摘した。「その後通貨危機が発生し、金融危機へと発展。実態経済への危機につながった」と振り返った。

金融危機を招いた要因ついて、「資金の流入と流出のミスマッチが起きた一方、銀行の借り入れは短期、融資は長期とミスマッチが重なった。資本の流入が増加、過剰な(抱え込み)が起き、銀行、ノンバンクともに大規模な損失を計上、危険な状態に陥った。通貨価値も(実勢より高すぎる)オーバーバリュー状態だった」と分析した。

さらに「金融の自由化が1990年代に実現したものの、為替相場が市場の状況を反映していいなかった点も金融危機の誘因となった」と指摘した。「外貨準備がぜい弱だったため投資家から信用されなかった点もあった。外貨準備が十分だった台湾、中国は影響されなかった」とも言明した。

現在の経済状況について「明らかに資本の流入は過大、潤沢な金融緩和や資金投入が続けられている」と分析。「世界経済の伸びが鈍化する中で、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを志向。キャピタルフロー(資金の流れ)をいかに管理していくかが重要だ」と強調した。日韓関係のもつれから15年2月から凍結状態となっている日韓通貨スワップの再開が望ましいとの考えを示唆したものと注目される。同スワップは金融危機などの際、日本円と韓国ウォンの一定額を、あらかじめ決定した為替レートで交換する協定。

アジア通貨危機は、1997年にタイを震源として、インドネシアや韓国などのアジア諸国に波及。1997年7月2日に投機的なバーツ売りの圧力に屈したタイが固定相場制を放棄。これを契機にインドネシアや韓国などアジア諸国へ危機が飛び火し、急激な資本流出と通貨暴落が発生した。タイ、インドネシア、韓国は、経済に大きな打撃を受け、IMF管理体制に入った。

特に韓国は危機的状態に陥り、同国に対しIMFが210億ドルの融資を決定。このほか、世界銀行から100億ドル、アジア開発銀行から40億ドル、日本から100億ドル、米国から50億ドルなど、IMFを含めて支援パッケージは総額580億ドルに上った。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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