<コラム>今村復興相が記者会見で「出ていけ!」、中国でも注目

如月隼人    2017年4月7日(金) 13時40分

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中国のニュースサイトで5日「福島原発事故の責任を再三追及された日本の大臣が怒った 出ていけ!」といった見出しの記事が踊った。資料写真。

中国のニュースサイトで5日「福島原発事故の責任を再三追及された日本の大臣が怒った 出ていけ!」といった見出しの記事が踊った。今村雅弘復興大臣が4日の記者会見で、原発事故についての国の責任を何度も問われ激昂した件だ。言語習慣の問題もあり、日本の高官が公の場で感情的になったことを中国人読者にことさら強く印象づけることになった。

記者会見に出席したジャーナリストの1人が、原発事故で避難してから現在も帰宅できない人に対する国の責任を追及しつづけた。今村大臣は当初、不快感を覚えながらも温和な対応に努めていたようだ。しかし最後にはケンカ腰になり、「うるさい!」とも発言した。

日本語は世界的にみても敬語表現の発達した言語だ。通常の言語感覚ならば、怒りを感じたとしても「公式の場の発言」であれば敬語表現を維持しようとするだろう。今村大臣も、「出ていきなさい!もう2度と来ないでください!」と、報じる側を排斥する“トランプ大統領に匹敵”する発言はしたが、敬語表現は保った。

しかし日本語の敬語を外国語に翻訳する場合、難しい面がある。例えば中国語なら、「出ていきなさい」を敬語表現も含めて訳せば「請滾出去」とでもなるだろうか。ただしこれでは「どうぞ出て行ってください」といった雰囲気で、その場の緊迫した雰囲気は伝わらない。

そこで、中国メディアの担当者が選んだ翻訳が「滾出去!」だった。あるいはさらに切り詰めた「滾!」だ。中国人読者には今村大臣が敬語表現をできるかぎり使おうとした背後にある「最低限の礼節は保とう」とした感覚は伝わらず、怒りにまかせて「出ていけ!」と叫んだ印象だけが伝わることになった。

中国さらに中国以外でも、日本人は礼節を貴ぶ民族と評価されている。一方で、表面上は礼節を重んじるが心の中は傲慢との見方もある。今村大臣の発言は外国人に向けて「日本人の本音と建て前は大きな距離がある」と改めて印象づけてしまった可能性がある。

今村大臣の所管は国内問題だが、日本という国に対する注目度を考えれば重要人物の言動は世界に向けて発信されていくと考えねばならない。政府高官あるいはそれに準じる立場の人として日本の国益に配慮するならば、言語上の問題を含めて自らの言動が世界的な対日観にどのような影響を及ぼすかと冷静に考えるセンスが必要と考える。どうだろう。(4月7日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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