<コラム>中国がミャンマーと関係強化に懸命、インド洋進出が念頭、「同胞」も見捨てる措置

如月隼人    2017年4月7日(金) 10時20分

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中国がミャンマーとの関係強化に力を入れている。究極の目的はインド洋への道の確保だ。写真はミャンマーの国旗。

中国がミャンマーとの関係強化に力を入れている。究極の目的はインド洋への道の確保だ。両国関係の障害になっていたミャンマー国内の華人系反政府組織については、中国の金融機関を通じての寄付ができないようにした。一方、ミャンマーのティンチョー大統領は6日、習近平国家主席の招待による中国への公式訪問を11日までの日程で開始した。

習近平政権が打ち出している世界戦略「一帯一路」の一環として、中国はインド洋を経て中近東やアフリカ東部にいたるまでの経済圏の建設を目指している。その不安定要素となるのが南シナ海情勢だ。

中国が南シナ海のほぼ全域について権利を主張していることに、東南アジアの沿岸国はもとより日米やオーストラリアも警戒と不信を強めている。中国としては、対立が激化した場合の最悪のシナリオとして自国船に対するマラッカ海峡通過阻止も想定しておかねばならない。インド洋への道は遠のく。

ここで重要になるのがミャンマーだ。ミャンマーは雲南省で中国と国境を接しておりインド洋にも面している。中国はミャンマーとゆるぎない親密な関係を構築しておけば、ミャンマーを経由してのインド洋への進出を確保できることになる。マラッカ海峡封鎖という極端な事態にならなくても、「最悪の場合でもインド洋への道は確保」という前提は、中国にとってさまざまな駆け引きで有利に働く。

中国は古くからミャンマーとの関係を重視してきた。ミャンマーの軍事政権に西側諸国が経済制裁を実施していた時期にも「内政不干渉」を理由に、密接な関係を維持した。「インド洋への道の確保」に着手したのも早く、2009年にはミャンマー西部の港、チャウピュ港のミャンマー側との共同開発にも着手している。

ミャンマー側は軍政脱却後も自国の経済建設にとって中国との関係強化が重要と判断。外相を兼任するアウンサンスーチー国家顧問は、民主化後の東南アジア諸国連合(ASEAN)以外の初の訪問先として中国を選んだ。

ミャンマーと中国には対立点もあった。ミャンマー当局がもっとも憂慮していたと見られるのは、中国とミャンマー北部の反政府勢力のミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)の関係だ。MNDAAはコーカン族による武装集団で、2015年には政府軍と大規模な戦闘を展開。今年(2017年)3月にも戦闘が再び激化した。国境地帯の戦闘であり、中国領内に砲弾が落下したりミャンマー政府軍機が中国領内を誤爆して民間人に死傷者が出たこともある。

コーカン族は17世紀ごろに中国から移住した漢人の子孫で、話す言語も中国語だ。そのため、中国ではMNDAAを「同胞」と受け止め支持する人がいる。MNDAAは中国農業銀行などに口座を設け、寄付金を集めた。特に2015年の戦闘激化時には中国の金融機関を通じて集まる資金が急増したとされる。

ところが中国の金融機関は戦闘が激化した直後の3月中旬、MNDAAの口座を凍結した。MNDAAは国際的にテロ組織などに指定されてはいないが、現在もアヘン密売に関係している可能性がある。ロイター電によると事情通の専門家は、金融機関としてリスクがある以上、取り引きを停止してもおかしくないと説明したという。

しかし、ここで問題になるのは中国の金融機関が「なぜ今になって口座凍結か」ということだ。中国当局による「ミャンマーの反政府勢力への肩入れは許さない」との意思表明だったと解釈するのが自然だろう。

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