<大震災から6年>災害救助犬、行方不明者捜索で大活躍=人と動物の絆が生まれた―童話作家が描いた世界

八牧浩行    2017年8月7日(月) 22時37分

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東日本大震災から6年。井上こみち著『災害救助犬レイラ』(講談社)、は、この未曽有の大震災で、行方不明者捜索に当たった「人と動物の絆」をテーマとしている。惨禍の記憶を風化させてはならない。写真は2011年3月の岩手県釜石市。

東日本大震災から6年。井上こみち著『災害救助犬レイラ』(講談社)、は、この未曽有の大震災で、行方不明者捜索に当たった「人と動物の絆」をテーマとしている。

災害救助犬とは、震災が発生したときや、海や山で行方不明になった人が出たときに、すぐれた嗅覚をいかして、被災者を発見する犬のこと。岩手県胆沢郡金ケ崎の獣医・村田忍さんは、動物と人が、ともに幸せでいられる関係を築きたいと思い、災害救助犬の訓練士に。シェパード犬のレイラを災害救助犬に育て、消防団に協力し、迷子の捜索などを手伝うなど、地域の安全を守ってきた。

村田さんとレイラは東日本大震災(2011年3月11日)の翌朝、自衛隊のヘリコプターに乗って、津波の被害の大きかった同県大船渡市へ赴いた。目の前に広がるのは、がれきの山。とても人が住んでいたところとは思えない。レイラの役割は、がれきの中に埋もれている人を見つけること。しかし、見つかるのは亡くなっている人ばかり……。目印として立てられた赤旗が無情だ。初めて出会う遺体の多さに戸惑いながらも、レイラは、村田さんに喜んでもらいたい一心で、生存者を探し続ける…。そして見つけた!体全体で嬉しさを表現する。

村田さんもレイラも「地獄絵」のような惨状の中で疲労困憊(こんぱい)。大船渡市から宮城県気仙沼市まで、1週間以上にわたり、寝食を共にしながらひたすら生存者を探すつらい作業が続いた。レイラは足を怪我しながらも人々に寄り添い、悲しみと生存者発見の喜びを理解する。村田さんはいつもレイラにいたわりの声をかけ、レイラもやさしい目で応える。人と動物の絆が生まれた。

大震災から6年経ったが、惨禍の記憶を風化させてはならない。村田さんは「どれだけ早く現地入りできるかが人命救助のカギになる」と語っている。

著者の井上こみち氏は、人と動物のふれあいを描いた童話を数多く手がけ、『海をわたった盲導犬ロディ』(理論社)で第1回日本動物児童文学賞優秀賞、『カンボジアに心の井戸を』(学習研究社)で第28回日本児童文芸家協会賞、『往診は馬にのって』(佼成出版社)で第6回福田清人賞を受賞。(八牧浩行

 

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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