<コラム>日本ではありえない?中国版「スーパーナニー」から見る中国富裕層の悩み

むらさわりこ    2017年3月15日(水) 19時30分

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スーパーナニーは元々イギリスのリアリティ番組であった。これの中国版がある。「超級育児師」という番組で、深刻な悩みを抱えた依頼者がスーパーナニーと一緒に家庭の再生の為に奮闘する姿が描かれている。資料写真。

スーパーナニー(super nanny)は元々イギリスのリアリティ番組であった。教育の専門家(super nanny)が悩みを抱える依頼者の自宅に出向き、その家の子供や家族を教育していく姿を描く、というものだ。

これの中国版がある。「超級育児師」という番組で、「子供が精神的不安定ですぐに泣き叫んで暴れてしまう」「子供が親に暴力を振るい、親も子供に暴力を振るってしまう」などの深刻な悩みを抱えた依頼者がスーパーナニーと一緒に家庭の再生の為に奮闘する姿が描かれている。

以前こんな回を見た。依頼者は中国広東省深セン在住。深センと言えば言わずと知れた富裕層の街である。母親は32歳の専業主婦。父親は31歳。子供は2歳で名前は「小一一」(シャオ・イーイー)。家はかなり清潔で絵なども飾られていて、おまけに室内犬まで飼っている。母親が専業主婦であるし、豊かな暮らし振りがうかがえる。悩みは「子供が母親にべったりで困っている」という内容だった。初日はスーパーナニーである先生が1日家庭のありのままの様子を観察する。2日目に先生と家族で話し合いが行われ、今後の方針などを決めていくという流れである。

日本人としてカルチャーショックだったのが「私たちの家庭の問題はこれだ!」と堂々と公表し、先生も先生で「あなたたちの問題はこれよ!」と面と向かって宣言、「この問題を解決するためにこうしよう!」とロジカルに物事を進めていく点である。

この回の先生が指摘した問題は「母親が子離れ出来ていないこと」「子供が水を哺乳瓶に入れて横になって飲んでいること」「母親が父親に関心がなく、父親の家庭での居場所がないこと」であった。それに対する解決法は2つ。「子供の独立心を育てること」と「規律に沿った生活をすること」。母親と父親は手を取り合って見つめ合い「一緒に変わって行こう」と誓い合っていた。

日本では見られなさそうな番組である。まず家庭の問題を公にすることが日本ではタブー視されているし、人の家庭の問題を他人が堂々と指摘することなど、日本ではまずあり得ない。

そしてさらにカルチャーショックなのは、あれだけ泣き叫んだり、ぐじゃぐじゃに荒れていた家庭が問題解決した途端あっけらかんと円満な家庭に変わるのである。その切り替えの早さに日本人の私としては驚きを隠せない。あれだけ暴れていたり、問題を抱えていた子供も、にこにこ人が変わったように穏やかである。

イギリス版も観たがイギリス版に出てくる家庭は、父親は腕に刺青、母親は鼻ピアス、のような「貧困層のしつけに問題がある家庭をベテランの教育者が指導する」といったニュアンスであった。依頼者のほとんどが裕福な家庭で「裕福だからこそ家庭の温かさが失われてしまっている」という部分に焦点を当てた中国版とは異なっている。中国人の抱える家庭の闇とその再生の過程が見られる興味深い番組だ。

■筆者プロフィール:むらさわりこ

1989年日本生まれ。22歳の時に2歳年上の福建省出身の中国人男性と結婚。英語を独学で習得後、英会話講師として働く傍ら中国のテレビなどを通し中国語も独学で習得。趣味は語学と読書。図書館があまりに好きで毎週通っている。結婚前はベトナム、ニュージーランド、モンゴル、カナダ、ラオス、フランスなど様々な国を一人で渡り歩く。自分のやりたい事や面白い事に国境や言葉の壁は関係ないと考えている。

■筆者プロフィール:むらさわりこ

1989年日本生まれ。22歳の時に2歳年上の福建省出身の中国人男性と結婚。英語を独学で習得後、英会話講師として働く傍ら中国のテレビなどを通し中国語も独学で習得。趣味は語学と読書。図書館があまりに好きで毎週通っている。結婚前はベトナム、ニュージーランド、モンゴル、カナダ、ラオス、フランスなど様々な国を一人で渡り歩く。自分のやりたい事や面白い事に国境や言葉の壁は関係ないと考えている。

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