<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼・中国初の大リーグ試合に感じた疑問と期待、本格普及なるか…

Record China    2008年3月17日(月) 18時42分

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中国初の米大リーグの試合として、パドレス―ドジャースのオープン戦が15日、北京五輪の野球会場でもある五カ村球場で行われた。試合は、結局3−3で引き分け。1万2000人あまりの市民が本場の野球を堪能した。

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中国初の大リーグ試合に感じた疑問と期待

メジャーパワーで野球の本格普及なるか…

中国初の米大リーグの試合として、パドレス−ドジャースのオープン戦が15日、北京五輪の野球会場でもある五カ村球場で行われた。試合は、中盤まで3−1でドジャースがリードしたものの、8回にパドレスが追いつき、結局3−3で引き分け。1万2000人あまり(公式発表)の北京市民が野球の本場メジャーの野球を堪能した。

中国は野球がほとんど普及しておらず、一般の人たちのほとんどはルールも知らないという状況。2002年には、野球のトップリーグ『中国野球リーグ』が発足し、今年で7年目を迎えるが、野球の普及という意味では、まだまだ程遠いというのが現実だ。

一方、大リーグを運営するMLBはベースボール「後進国」での普及活動に実績があることでも知られる。以前はオーストラリアでも成功例があり、今回は、そこで使用した施設も持ち込むなど、そのノウハウを全面的に生かす形でのオープン戦開催となった。

すっきりと青空が広がり、晴れ渡った今日の北京。試合開始前、1時間15分前にゲートが開いたが、開門前から多くの観客がゲート前で入場を待っていた。試合を戦う両チームのレプリカシャツに身を包む米国人や、野球にはちょっとうるさい日本人も大勢やってきていて、なかなか国際色豊かな雰囲気。

穏やかな日差しがあるものの、時折冷たい風が吹くスタンドだったが、『格安席』として売り出したライト側スタンド(一人25元・約400円)は、ほぼ満席となった。その他の席は小中学校の野球チームや招待客などが主だったが、こちらも6、7割の入りで、まずまずの「盛り上がり」だったと思う。

日本メディアの報道で「観衆は同点で白熱した展開となったゲーム終盤にもかかわらず、スタンドから半数近くが引き揚げていた」との配信記事があったが、実際、引き揚げたのは、そういった『動員組』がほとんど。決して大部分ではないが、自らチケットを買って足を運んだ人たちは、最後まで球場で熱戦を見守っていた。

ただ、残念ながら、『ルールが分からない』という人がほとんどで、会場で時折起きるウェーブや派手に見えるフライに大きな歓声を上げるくらいしか、楽しみ方が『分からない』という状況ではあった。

さて『初の大リーグ試合』と鳴り物入りで行われたこの試合だが、私には疑問を抱くことがいくつかあった。

試合中は、チアリーダーによるショータイムやゲームコーナーなど趣向を凝らしたイベントを実施し、7回終了後はおなじみの『私を野球に連れてって』を流すなど、随所に『大リーグ的』な演出が施されたものだった。だが、観客の大部分が野球のルールを知らない、という状況では、とても、これらの演出が生きているとは思えなかった。

日本のプロモート会社が演出を担当するCBL(中国野球リーグ)では、時折、野球のルールを説明する会場アナウンスが入る。確かに、『野暮ったい』感じはするが、その感覚は、我々、日本人だからこそ。やはり、この『野暮ったい』説明は必要なのだと思う。

ファッショナブルではなくなるかもしれないが、『野球を知らない人たち』に対し、しかも一部のイベント部分を除いて、多くが『英語のアナウンス』によって大リーグ並みの演出をする、というのは無理があった。同じ英語圏であるオーストラリアとは、少し異なったアプローチが必要な一例だろう。

また試合のスコアがオーロラビジョンの一部に表示されるだけのため、外野席の大部分からは非常に見にくく、試合進行が全く分からない、などの不満が観客からは出ていた。

もちろん華やかなイベントや音響でゲームを彩るのは結構だが、まずは『野球の普及』が先決となっている情況だけに、野球の『基本的な』面白さを観客に訴える術をもうちょっと工夫して欲しかったというのが正直な感想である。

だが、このような不満はさておき、米大リーグのオープン戦が、オリンピックイヤーの今年、北京で開かれたことは画期的なことだと思う。五輪競技から野球が外された今、まだスタートしたばかりの『中国野球』が“五輪後”にどうなるのか、関係者らの不安は大きい。だが、そんな中で、世界最高峰のメジャーが、ただ選手を中国から獲得するという形だけではなく、実際に興行を行ってファン層を拡大する取り組みを始めたことは、大きな意義をもつことだと思う。

今日、球場にはグローブを持ってホームランボールを待つ子供がいた。少年野球のユニフォームに身を包んで大リーガーのプレーに目を輝かせる子供がいた。コーラとホットドッグ片手に家族連れで応援に声を枯らす人たちもいた。会場の全てではないが、確実に野球の楽しみ方を知っている人たちが増えてきていると思う。

私は、そんな風景を目にして、中国野球が、ただ4年に1度のスポーツイベントとの関わりだけで、消え去ってしまうようなことはないと確信している。

来月初めには7年目の中国野球リーグが開幕する。このブログ記事やスポーツナビでのコラムなどを通じて、このリーグの様子をお伝えしつつ、鍵となる年『五輪イヤー』を迎えた中国野球にこだわって、今後も継続的に、お伝えしていきたい。

<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>

■筆者プロフィール:朝倉浩之

奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。

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