<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼・中国女子サッカーでまた『内紛』?もはや『末期』

Record China    2008年3月17日(月) 14時15分

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今度はフランス人のエリザベス監督が率いる女子サッカー代表で問題が起きた。“例によって”監督とフロントの内紛であった。写真はエリザベス監督。

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中国女子サッカーでまた『内紛』? 

次から次へと『お騒がせ』の続く中国サッカーで、またも“内乱”…

今度はフランス人のエリザベス監督が率いる女子サッカー代表で問題が起きたのだ。

ポルトガルで行われていたサッカーの女子国際トーナメント「アルガルヴェ杯」で、中国は史上ワースト2位の9位となった。だが、これはあくまで親善試合。米国ノルウェーなど欧米の強豪国と戦うことで、北京五輪に向けたウォーミングアップする…あくまで、今大会の意味合いはそれでしかない。確かに、2月に開催された東アジアサッカー選手権の日本戦以来、連敗が続く、という不名誉な結果となったが、この成績で一喜一憂するような、そんな性質の大会ではないのだ。

にもかかわらず、今大会がクローズアップされたのは、“例によって”監督とフロントの内紛であった。

3月8日、ノルウェーに1−3で敗れた試合後、エリザベス・ロイゼル監督(フランス)は取材を一切拒否し、同時にチーム代表の張健強氏の解任を要求。はっきりと「張氏が解任されないならば、チームには残れない」と発言し、これまで「誰もが知っている秘密」だった内紛がはっきりと表沙汰になった。

エリザベス監督については、かなり以前から、多くの批判が集まっていた。戦術や選手起用に関しても疑問の声が大きかったし、選手とコミュニケーションを取ろうとせず、外国人スタッフとばかり食事をしている…などといった選手側の不満もメディアを通じて、度々伝わってきた。

有名なのは以前起きた「遅刻騒動」だ。中国・重慶での合宿期間中、練習場にエリザベス監督が遅刻したという“事件”。これに対し、チーム代表の張健強氏が罰金の支払いを求めたものの、これを監督が拒否した。

エリザベス監督は当時、病気の父親を見舞う電話をしていたのが理由だと、後で分かり、また、遅刻といっても、それほど練習に影響を与えるものではなかったのだが、これが報道されたことにより、選手、協会、そして監督サイドの“疑心暗鬼”な状態が明るみに出たのだ。

また、東アジア選手権にいたる数か月間で、『敗戦の責任を選手だけに押し付けている』、『中国人コーチをスタンドにおいやり、フランス人コーチだけで周りを固めようとしている』、『練習方法が合理的でない』などなど、数え上げれば切りがないほど、彼女に対する不満が噴出した。ここまで代表監督に対する、しかも外国から招いた監督に対する批判が公然と沸き起こるのはめずらしいし、しかも、それを選手サイドが堂々と口にしているところが『末期症状』を示しているというほかない。

その流れの中で、監督とチーム代表の『内紛』が明るみにでたというわけだ。これについては、何が原因なのか、さまざまな報道がなされているが、私には、本当のところは分からない。

ただ、エリザベス監督が「張健強氏とは協力できない」「彼がいる限り、まともな環境で仕事ができない」と記者団のいる場で公言しているのは事実。中でも聞き捨てならないのは、ノルウェー戦で、張健強代表がエリザベス氏を解任するため、選手たちに「わざと負けさせた」という発言である。

この真意は分からないが、少なくとも、現在の彼ら二人の関係はすでに互いの我慢の“限界点”まできていることは想像できる。

今後の方針については、来週月曜日17日の記者会見で明らかにされるということだが、あるスポーツメディアによると、人事を統括する国家体育総局の責任者はすでにエリザベス氏の更迭に同意しており、エリザベス氏本人も帰国の準備に入っているという。

中国女子サッカー代表の『内紛』といえば、前監督のドマンスキー氏が就任する前の馬良行監督と李飛宇チーム代表の争いが記憶に新しい。詳しくは以下のエントリーをご覧になって頂きたいが、両者がチームの指導方針をめぐって対立し、結局、監督が解任されるという結末を迎えた。

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/asa8043/article/39

その後、就任したドマンスキー氏はフロントの信頼もそれなりに得て、ある程度の成果が上がり、女子代表に“光明”が差したものの、W杯の不振の責任をとる形で退任。その後を受けて就任したエリザベス氏もご覧の通り…というわけだ。

私は、個人的には、一度、外国人指導者を信頼して招いた以上、全てを任せて、『まな板の鯉』にならないと、中国サッカーは変わっていけないと思っている。

目先の勝敗だけで監督を闇雲に批判し、『木を見て森を見ず』をやってしまっては、中国サッカーの発展はない。だから、ここ数週間続いたエリザベス監督に対する『中傷報道』にも私は批判的だった。

だが一方で、中国女子サッカーは構造的に『内紛』の運命にあるのかもしれない…とも思えてくる。

この現象が、たまたま、それぞれが持つ個性がぶつかり合った結果なのか、それとも何らかの構造的な問題なのか、という疑問である。

この北京五輪の5か月前という時期…またも繰り返した『内紛』。この理由は一体何なのだろう。

早くも次期監督についての噂が聞こえてくる。「もう外国人監督はこりごり」という声もあり、また時間的にも差し迫っていることから、「中国サッカーを熟知しており、海外経験もある程度持っている」との条件を満たす「中国人」となる可能性が大きい。

しかし、はっきりいって、今からチームを引き受け、自分の色にチームを染め上げて、自信を持って北京五輪に臨めるだけの時間は、次期監督には与えられない。さまざまな不安を抱えながら、本番になだれ込むことになるだろう。

だが、男子サッカーと同じく、中国サッカーにとって、五輪が全てではなく、何よりも「これから」が大切だ。その「これから」のために、『内紛』を招く、この不可思議な構造の原因がどこにあるのかを探る必要があるだろう。

<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>

■筆者プロフィール:朝倉浩之

奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。

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