<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼・五輪に向けた『人口管理』…証明書めぐり行列つくる

Record China    2008年3月14日(金) 10時50分

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北京五輪に向けた北京市内の住民の『調査と管理』のため、先月22日から、「暫住証」の一斉点検が始まっている。資料写真。

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五輪に向けた『人口管理』…証明書めぐり行列つくる

北京五輪に向けた北京市内の住民の『調査と管理』のため、先月22日から、「暫住証」の一斉点検が始まっている。

北京には、各地方から大勢の外来人口「外地人」が流入している。「中華人民共和国戸口登記条例」など関係法令によると、地方から北京にやってきて1か月以上滞在する16歳以上の国民は、北京に到着してから3日以内に地域の派出所に届け出て、「暫住証」を取得しなければならないことになっている。

だが、現実的には、何らかの調査がない限り、「暫住証」がないことによって不利益を受けることはあまりなく、これを取得せずに、北京で就学、就職している人たちが大勢いる。

また、この「暫住証」そのものが差別だとして、反対の声も大きい。

だが、北京五輪を前にして、外来人口の把握と、その規制に乗り出そうとしている当局は、先月22日から、各戸を個別に回るなどして、“一斉点検”を始めたのである。

ということで、市内の各派出所には、これまで“無許可”で北京に居住していた地方からの人たちが暫住証の申請のために殺到。それぞれ専用の窓口まで作って対応しているが、それでも連日、派出所の前には長蛇の列が出来ている。特に「外地人」が多く居住する地域では、この行列がひどく、まだ日の昇る前の早朝から列を作る人まで出てくるなど、さながら五輪のチケットフィーバーを思わせるような状況となっている。

ただ、これに乗じて、『悪巧み』を考える村が現れたと中国メディアが伝えた。

これは北京の北郊外、昌平区のある村の出来事。当地の派出所では、暫住証を発行する際、各集落の「村委員会」が出す居住証明書を必要と定めた。

この証明書は、それぞれの集落の『村委員会』が発行する。ところが、ある村の『村委員会』の窓口には、「証明書が必要な者は、村の衛生費120元(1800円)を払うべし」という張り紙が貼られたそうだ。その村は、ここ最近、衛生状況が悪化。その理由について「多くの外来人口が流入したから」と村が考えたらしい。そこで、その当事者である「外地人」に対して、1年分の『衛生費』を請求したというもの。実は、こういった『便乗徴収』を行っている村は一つ二つではないようなのだ。

だが、北京市公安局によると、そもそも、この『居住証明書』そのものが必要なく、住民は直接、派出所にいけば5元(75円)の手数料で暫住証が作成できるということだ。これは明らかに根拠のない「便乗徴収」というわけ。

と、北京五輪を前に、いよいよ北京市内も『人』に関する準備が始まった。これまでは、インフラ建設などハード面での動きが目立ち、ただただ、その変化、発展の速さに驚いたものだが、この『人』に関する動きは、身近なところで起きるものだけに、非常に生々しい。今後、ビザ政策などにより、外国人に対する管理も強める動きも見えており、これは我々自身に大きく関わる問題となってくる。

北京五輪に向け、街が大きく動き出した…しかも生々しく…。この『暫住証』の一斉点検は、中国が国家の威信をかけて開く大イベントがいよいよ近づいてきたことをこれまでとは別の形で、感じさせる…そんな出来事だと思う。

<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>

■筆者プロフィール:朝倉浩之

奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。

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