<直言!日本と世界の未来>東アジア自由経済圏の実現に向け、日本はリーダーシップ発揮を―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2017年2月4日(土) 10時40分

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環太平洋連携協定(TPP)が米トランプ政権の離脱で後退した今、日本は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などアジア自由経済圏構想の実現に向けてリーダーシップを発揮し、建設的な貢献をしていくことが求められている。

かつて、日本経団連の姉妹団体である経済広報センターが、ASEAN(東南アジア諸国連合)、中国、韓国から研究者を招き、東アジア経済統合の現状と展望をテーマとしたシンポジウムを開催したことがあった。東アジア各国の政策決定に大きな影響力を持つ有力な研究者と、東アジアの繁栄と安定に向けて率直な意見交換を行おうというのが開催の趣旨だった。私は当時同センターの副会長を務めていたことから、主催者側の立場で開催に関わった。

近年、東アジア諸国の間に地域協力の機運が盛り上がっており、日本においても東アジア経済連携や経済統合に対する期待と関心が高まりをみせている。こうした中、日本、中国、韓国とASEAN10力国との自由貿易協定(FTA)を核とする日中韓ASEAN包括的経済連携協定(EPA)交渉が進められている。原産地規制や知的財産権保護など貿易や投資の基盤となる共通のルール整備を目指しており、将来的な東アジア自由経済圏の構築に向けても大きな布石となろう。

東アジアは今まさにダイナミックに変化を遂げようとしており、それぞれの国々が多様性を乗り越えて相互補完的な協力関係をどのように構築していくかが、今我々に課された大きな課題である。東アジアにおいては、日本の製造業の直接投資を起点に国際分業が進展し、東実上の経済統合が進みつつあるものの、地域の経済関係をより深化させていくための制度的な枠組みの構築は立ち遅れている。

冒頭に紹介したシンポジウムのスピーカーからは、「ASEANは東アジア経済統合において「ハブとなる用意がある」「統合には政治的に良好な関係が不可欠」などの発言とともに、各国・地域の立場の違いも感じられた。各国それぞれの国益や立場があるにせよ、東アジア自由経済圏の形成には、東アジア地域の平和と繁栄のために共に協力していこうという連帯感が不可欠である。今こそ、地理的に隣接する東アジア諸国が、共通の利益のために経済連携を推進すべきではないかと思う。

アジアの大型通商協定では、日中韓ASEANにオーストラリア、ニュージーランド、インドが参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が今年中の妥結を目指している。環太平洋連携協定(TPP)が米トランプ政権の離脱で後退した今、日本は東アジア自由経済圏構想の実現に向けてリーダーシップを発揮し、建設的な貢献をしていくことが求められている。東アジアの地域協力の枠組みづくりは、経済統合が国内の構造改革を促し、私たち日本の産業界にとっても国際競争力を強化することにつながるだろう。

日本は東アジア自由経済圏によって得られる機会を最大限活用し、国としての活力を高め、グローバルな競争に挑戦していかなければならない。そのためには、東アジア全体の経済統合のビジョンを提示し、自らのコミットメントを行動で示すべき時にきている。

立石信雄(たていし・のぶお)

1936年大阪府生まれ。1959年同志社大学卒業後、立石電機販売に入社。1962年米国コロンビア大学大学院に留学。1965年立石電機(現オムロン)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。日本経団連・国際労働委員会委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)「The Taylor Key Award」受賞。同志社大学名誉文化博士。中国・南開大学、中山大学、復旦大学上海交通大学各顧問教授、北京大学日本研究センター、華南大学日本研究所各顧問。中国の20以上の国家重点大学で講演している。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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