<コラム>中国の「独身の日」はなぜ「買い物の日」になったのか

浦上 早苗    2016年11月11日(金) 21時50分

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中国とアメリカの経済ニュースを翻訳している私が、最近集中的に担当しているトピックは、「トランプ新大統領」ではない。トランプのせいですっかり影が薄くなってしまった、中国の「独身の日」に関するニュースだ。写真はアリババが運営するネットモール「タオバオ」。

中国とアメリカの経済ニュースを翻訳している私が、最近集中的に担当しているトピックは、「トランプ新大統領」ではない。トランプのせいですっかり影が薄くなってしまった、11月11日、中国の「独身の日」に関するニュースだ。

中国ではこの日から一週間ほど、インターネットの大セールが行われる。アリババのECサイトは昨年、1日で約1兆4000億円(執筆時点のレート)を売り上げた。今年は11月11日午前7時までの7時間の売り上げが、すでに8900億円を超えたという。

ヤマダ電機の昨年度の売上高(約1兆6127億円)に近い金額を、1日で稼ぐ「独身の日」には米メディアも注目しているし、ヤフーなど日本企業は、自国でも流行らせようとしている。

しかし、中国では11月11日のネットセールは「独身の日」ではなく、11が2つ並んでいることから「双11」と呼ばれている。

正確に言えば、11月11日は元々独身の日だったが、ネットセールの勢いの前に、ほとんどかき消されてしまっている。

アリババが11月11日にECサイトでセールを始めたのは、私が初めて中国に留学した2009年である。その頃は、スマホの普及も進んでおらず、インターネットショッピングも若者だけのものだった。アリババはネットショッピングを盛り上げるためにセールを始めたが、初年度に参加した店舗はわずか27店舗だったという。

あの頃の11月11日、皆は何をしていたのか。

留学先の大学ではこの日、合コンが開催され私も誘われた。11月11日は「光棍節」だった。「節」といえば祝日だが、これは公式の祝日ではなく、1990年代に大学生から発祥したと言われる。光棍は独り者を指す言葉で、独り者を示す「1」が4つ並んでいることに引っ掛けて、11月11日は「独身者」(彼女、彼氏がいない人など、“シングル”を幅広く含む)のための記念日になったのだ。

つまり、11月11日は元々、パートナーがいない人が集まって何かをする日で、若者だけが祝う日だった。そこにアリババが「非リア充の皆さん、買い物を楽しみましょう」と呼びかけ、セールを開始した。その後、大々的なキャンペーンやネットショッピングの普及もあり、わずか数年で、11月11日と言えば「セールの日」になった。

今、中国人の大学生に「11月11日は何の日?」と尋ねると、ほぼ100%「バーゲンの日」と返って来る。今はネット上だけでなく、普通のスーパーやデパートでもセールが行われるようになった。

10日夜から華々しいカウントダウンイベントが始まり、日付が変わると同時に目玉商品が売り出される。同僚の女性教員たちも、パソコンの前に張り付いて、日本のおむつや服飾雑貨を買いあさる。

一部の目玉商品を除くと、割引率は3〜5割で、楽天のスーパーセールやソフトバンクの優勝セールとそんなに変わらないとも思うが、中国人たちは「本物を扱っているお店が割引をする点が魅力なんです」という。

独身の日がネットセールに塗り替わる数年間で商機を得て急成長したのはアリババだけでない。今年、中国では宅配便配送会社の上場が相次いだ。

11月11日のセールが定着し始めたころは、爆発的な注文をさばききれず、商品が手元に届くまで半月かかることもざらだったが、物流業者は倉庫の拡張やビッグデータの活用など、急ピッチで配送体制を整備し、昨年のセール期間は一週間で7億8000万件の配送物を、大きな遅延や混乱なく、注文者の下に届けた。今年の期間中の宅配便件数は10億件を超えると見込まれ、数十万人の臨時宅配員が待機しているという。

■筆者プロフィール:浦上早苗

大卒後、地方新聞社に12年半勤務。国費留学生として中国・大連に留学し、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のメディア・ニュース翻訳に従事。日本人役としての映画出演やマナー講師の経験も持つ。

■筆者プロフィール:浦上 早苗

1974年生まれ、福岡市出身。早稲田大学政治経済学部卒業、九州大学大学院経済学府修了。大卒後、地方新聞社に12年半勤務。その後息子を連れ、国費留学生として大連に博士課程留学…するも、修了の見通しが立たず、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のニュース翻訳に従事。頼まれて映画に日本人役として出たり、マナー講師をしてみたり、中国人社会の中で、「日本人ならできるだろ」という無茶な依頼に、怒ったりあきれたりしながら付き合っています。マスコミ業界の片隅に身を置いている経験から、日米中のマスから見た中国社会と、私の小さな目から見たそれの違いを少しでもお伝えできれば幸いです。

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