<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼・特集版第4回「サッカー」

Record China    2008年2月7日(木) 14時5分

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レコードチャイナが配信する「中国発のオリンピック・パラリンピック事情」。北京在住の朝倉浩之氏による個人ブログ記事「<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼」。1月中の記事を中心とした「特集版」の第4回は「サッカー」。写真は北京五輪公式ボール。

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レコードチャイナでは、2008年2月以降、現地在住の専門家らが発信している中国発のオリンピック・パラリンピック事情を随時配信する。

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その第1弾として北京在住の日本人ラジオ局パーソナリティ朝倉浩之氏による個人ブログ記事を転載して「<点描・北京五輪>朝倉浩之の眼」としてお送りする。

同氏は、日本の民放テレビ局でスポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に携わった後中国に渡り、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、各種ラジオ番組などに出演。「一般中国人とともに暮らす生活者ならでは」という視点に立って、北京における「変化の空気」を織り込みながら、「街」そして「人々」にスポットを当てて情報発信したいと意欲的だ。

今回は、1月中に同ブログに掲載された記事を中心に競技・分野別にまとめた「特集版」のうち第4回「サッカー」をお送りする。「特集版」5回分の終了後は同ブログをほぼリアルタイムで配信する予定。

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■プロフィール:朝倉浩之

奈良県出身。同志社大学卒業後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中国国際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。

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■■■■■2008年01月03日 ■■■■■

サッカー五輪優勝で1億2000万? ボーナスが明らかに

オリンピックにW杯予選…今年は中国サッカーにとって、天下分け目の年…

中国サッカー協会は、今年、新たな『奨励金』制度を示した。五輪イヤーとW杯予選が重なっており、“特別な年”として重視する姿勢がうかがえる。

一部で報道されたところによると、国家代表については、仮にW杯アジア1次予選を勝ち抜けた場合には、チーム全体に200万元(3000万円)が贈られる。また各試合において、世界ランク50位以内のチームに勝った場合は50万元(750万円)、50位以下のチームに勝利した場合は30万元(450万円)が支給されることになっている。

そして北京五輪を控える男女五輪代表にも規定がある。

まず男女とも、仮に五輪で優勝を果たした場合は800万元(1億2000万円)が贈られる。

それ以下の場合も細かく規定されている。まず男子が予選リーグを突破した場合は300万元(4500万円)。ベスト4に入れば500万元(7500万円)、そして準優勝ならば600万元(8000万円)となっている。

また女子は、世界ランキングそのものが高いため、ベスト8入りだけでは100万元(1500万円)と男子の3分の1。だが優勝すれば、前述のように800万元が支給される。

支払われるとされるボーナスの配分については明らかではないが、これまでの例から、監督・コーチ陣、選手、スタッフに約80%が支給され、分配されることになりそう。

サッカー協会の謝亜竜副会長は「金銭は万能ではない。彼らは金のためにプレーしているわけではないからだ。だが奨励は必要」と語る。

『大切な一年』を迎えるに当たって、まずは金銭面で選手たちに『アメ』を示した格好だ。

■■■■■2008年01月03日 ■■■■■

W杯予選に向け…リーグ開幕を遅らせ、アジアCLにも出場ならず!

中国サッカー協会が2008年最初の「お達し」を発表…

今年は南アフリカW杯に向けた挑戦の第一歩の年。そのため、オリンピックが行われる8月まで、年の前半は国家代表を優先させて、強化するスケジュールが発表された。

3月26日には、ホームで強豪のオーストラリアを迎え撃つ。場所は、ドゥイコビッチ総監督らの意向により、高地の昆明が選ばれた。日本でも、アスリートが心肺機能の強化などのためにトレーニングを行う場所としてお馴染みだ。高地での試合経験が少ない「であろう」オーストラリアをここで迎え撃ち、少しでもアドバンテージを勝ち取ろうという作戦だ。

この「高地決戦」に向けて、中国スーパーリーグ(日本のJ1に相当)の予定も大幅変更だ。本来ならば、3月1日に開幕し、15日まで試合を消化した後、一旦休止して、一次予選に備える…という予定だったが、これでは、26日の試合まで10日ほどしか猶予がない。厳しい条件を利用して優位に立つつもりが、準備が十分でなく、「ミイラ取りがミイラ」…にならないよう、予定が変更され、予選終了後の3月30日開幕となった。

また3月中旬に予定されているAFCチャンピオンズリーグについても、厳しい『お達し』が出た。それによると、3月12日と19日に、中国の長春亜泰、北京国安の両チームはリーグ戦が予定されているが、これには国家代表選手は一切「参加してはならない」ということだ。26日のオーストラリア戦に向けて、選手は全力を尽くして、準備を行うべし、ということだろう。

前エントリーで紹介したボーナス制度と合わせて、中国の今年にかける並々ならぬ思いが伺えるが、さて、果たして結果のほうはどうだろう。

■■■■■2008年01月14日 ■■■■■

「二兎を追うものは・・」中国サッカー代表が立ち向かう困難

昨晩未明に行われた中国代表、五輪代表の練習試合はいずれも大敗。『二束の草鞋』は『二兎を追うものは一兎をも得ず』の結果となった。

北京時間の昨晩未明、中国代表はハンブルク代表と、五輪代表はドイツのクラブチームとそれぞれ練習試合を行い、それぞれ0−4、2−7で完敗した。

中国代表はリー・ウェイら3人の主力選手を五輪代表に“レンタル”。元々、総合力でも劣っていたチーム力はさらに分断され、自分たちのゲームをさせてもらえなかった。またオーバーエイジ選手を合流させて、本大会を想定して臨んだ五輪代表もオリバー・カーンの守るゴールから2点をたたき出したものの、守りのミスなども重なって、惨敗した。

2008年最初の遠征試合は、ほろ苦いスタートとなった中国の両代表。これで国内のサッカーファンの『がっかりムード』はより拡大してきた感がある。

だが、中国代表のベドロビッチ監督は試合後、大敗にも関わらず、「満足できる試合だった」とのコメントを出した。その理由は『ケガ人が出なかったから』。

この時期、最も怖いのが選手たちのケガであることは言うまでもない。現に女子代表のエース馬暁旭は年末の練習試合でじん帯を損傷し、全治6カ月。オリンピック出場は微妙な状況となり、チームに暗雲が立ち込めている。また、練習試合とはいえ、ベドロビッチはあえて「アウェーでの戦い方」を試した。当然、23日後に迫ったイラクとの決戦第1戦のアウェー戦に備えたものだ。今は、選手も次々と交代させて試し、全く異なる位置において、チームにとって最適な戦い方を試している段階だ。考えてみれば、ベドロビッチが代表監督に就任して、まだ時はそれほど経っていない。国際試合にしても、数試合しか経験していない段階で、チーム作りを云々するのは時期尚早である。

国内では、今年、W杯予選と五輪の「二兎」を追わねばならないことに不安が広がっている。チーム力が分断され、結局、『一兎をも得られない』状況にならないか、というわけだ。選手層の薄い中国ならではの心配ということになるが、私はこの状況こそ、中国サッカーを強くさせる原動力になると思う。

もちろん、二つのビッグ大会からかかるプレッシャーは相当なもの。いずれも手厳しいサッカーファンに加え、全国民の注目を受けた状況で戦うことになる。

ここで二つの大会を両天秤にかける必要はない。まずは国家代表のアジア1次予選まで23日。練習試合は2試合残っている。それに向けて、中国の“頂点”である国家代表の強化に全力を傾けるべきだ。そして6月からは、一気に五輪代表にシフトして戦えばいい。つまり、目前の試合を一戦一戦、大切に戦う…その試合に向けた『最良のメンバー』を集めて臨む…今の中国代表には、それしかないし、サッカーファンも、未来の中国サッカーを信じつつ『一つ一つの試合を大切にも届ける』姿勢を保ち続ける他ない。

この大きな試練は、必ず中国サッカーを大きく育てると思う。困難に対して、もっとアグレッシブに、死に物狂いで相手に立ち向かっていく(ケンカをするのは勘弁してほしいが…)そんな中国代表の戦いを見たい。

■■■■■2008年01月24日 ■■■■■

中国五輪代表、欧州遠征は『勝ちなし』

欧州遠征は2敗2引き分けで勝利ならず…。

ヨーロッパ遠征中の中国五輪代表は昨日夜(北京時間)、仏リヨンの2軍チームと対戦し、1−1で引き分け。全日程を終了した。これで欧州遠征の結果は、2敗2引き分けで、3ゴール、10失点。勝ちを求める遠征ではないとはいえ、戦いぶりを見守っていた国内サッカーファンからすれば、不満の残る遠征となったのは確かだろう。またここ半年間の欧州クラブとの練習試合でも8戦で勝利はなし、という結果となった。

欧州遠征では、孫祥、李ウェイ峰ら中国を代表するディフェンダーも出場した。これに海外組の鄭智が加われば、オリンピック代表として、現状においては最高のチームが出来上がる。だが、その彼らが出場した試合でさえも、守りが機能しなかった。実際に現地で観戦したわけではないが、VTRや報道等で見る限り、守りがかなりばたついていたような気がする。

そして、何よりも、ココ最近の試合では、去年、フランスに次ぐ準優勝を果たしたトゥーロン杯で見せた『戦う姿勢』が見えてこない。いわゆる『闘志』というものだが、テレビ観戦であっても、一つ一つのプレーから、それは伝わってくるものだ。これは、彼らが時折見せる『ラフプレー』とは全く異なるものであることは、もちろんだ。去年の南アフリカ8カ国対抗戦、イタリア遠征、瀋陽4カ国対抗戦と試合を積み重ねてきた五輪代表。結果が出ないことは、心配ないが、オリンピックが近づくにしたがって、なぜか『元気がなくなってきた』ことこそ不安な点だと思う。

攻撃面では、最終戦で英プレミアで活躍する董方卓の突破からの同点ゴールが生まれ、希望をもたらしたが、五輪代表にとって、「最強のFW陣」の組み合わせはまだ見つかっていない。中盤に英チャールトンの鄭智が加わることで、チームにどんな変化が加わるかが頼みだが、いずれにしても、中国サッカーは五輪に向け、大きな不安を抱えながらの歩みとなりそうだ。

■■■■■2008年01月27日 ■■■■■

中国代表『勝ちにこだわる』練習試合がまもなく

来月6日、旧暦を祝う中国では『大晦日』に当たるこの日、中国サッカーは大きな山場を迎える。南アW杯アジア予選の第1戦、イラクと相対する。

その前哨戦として、ペドロビッチ監督が「勝ちにこだわる」と明言している最後の練習試合が27日北京時間15:00から、広東省で行われる。相手はシリア。

北京青年報によると、昨日の練習後のベドロビッチ監督は、

「明日が最後の(練習の)機会。そして全ての選手にとって最後の“表現”の機会」と、決戦前の最大の鍵となる試合であるという意識を明確に示したという。また協会関係者も「もし今日勝てなければ、選手たちの士気に大きく影響する」と“勝利への渇望”を隠さない。

ここ数日は雨模様で、昨日は1時間足らずのトレーニングで切り上げた中国代表。ベドロビッチ監督は「ここ4試合でゴールがないことは気にしていない。だが、もし今日の試合で進歩が見られなかったら、失望せざるをえない。今の我々のリズムからすれば、明日は“勝つべき試合”だ」と自信と不安の入り混じった心境を語る。

今日の試合は、先日の練習試合で鼻骨を骨折したDFのリ・ウェイフォンは欠場するため、守りの面で、どれだけ穴を埋められるかが注目だ。また中盤でも病気のためチームを離れる選手がいるなど、戦力的な不安があり、決して十分な状態ではないのが現実だ。だが、「大晦日決戦」まであと10日。病気だ、怪我だと言っていられない。決戦の行方を占う大きな一戦に中国代表は間もなく挑む。

■■■■■2008年01月27日 ■■■■■

中国サッカー代表、シリアに勝つも不安は残る…

サッカー中国代表は27日、シリア代表と練習試合を行い、2−1で勝利。2008年初勝利を飾った。

「国家代表がこんなミスをするなんて、我々には、とても受け入れられない」

「今の国家代表にはGPSが必要なようだ。ゴールがどこにあるかを知るために」

2月6日に控える南アW杯アジア3次予選の第1戦に向け、最終試合となったるこの試合。前半の中国代表のあまりのふがいなさに、CCTV中国中央テレビの実況アナは、こんな“迷”文句を連発した。確かに覇気のない中国代表だった。世界ランキングでは格下のシリアに、ボール支配率では負けていた。折からの雨で、ピッチが荒れていたのは確かだが、その『荒れた』地面にうまく対応していたのはシリアの方。ホームの中国は、守りはミスが連発したし、相手のシュートは、ことごとくポストに助けられた。運よく0−0で折り返した…という感じだった。

後半も精細を欠いた攻撃が続いたが、後半19分、ようやく曲波が決め1−0。これが2008年最初のゴールとなった。

ここからは、中国代表は少し目が覚めたようだった。ボールが良くつながるようになり、ボール回しにリズムが生まれてきた。ゴールは奪えなかったが、「やりたいこと」が見ている我々にも良くわかるようなプレーが増えてきた。

このまま試合終了かと思われたロスタイム、シリアがテクニックのあるプレーで中国DFを交わして押し込み、同点。

だが、「またもや…」という中国サッカーファンの思いをよそに、試合終了直前、コーナーキックから、周海浜、朱ティンのオリンピック代表コンビがヘッドでつないで、ゴールを割り、勝ち越し。2−1で、2008年最初の勝利を収めた。

得点を挙げる前と後では、彼らの動きが全く違った。その点では、試合後半の中国代表に「明日への光明」が見えたゲームだった。ただ相変わらず、ディフェンス陣になんでもないミスが多く、それがシリアに高い位置でボールを奪われる結果となり、何度もピンチを招いた。今日の地面が悪く、またシリアがそれほど『スピード』を感じさせないチームだったから、この結果となったが、「死の組」に入った3次予選で同じことをやれば、大量失点につながるだろう。

決して、万全とは言いがたい試合展開…またベドロビッチ監督の選手起用にもまだまだ迷いが見えるゲーム…。2月6日の決戦に向けて、「準備万端」とはいえない試合となった。私の目には、今の状態では、とてもアジアを勝ち抜いてW杯に名乗りを上げられるチームには見えない…というのが正直なところだった。

だが、少なくとも「勝利」という薬は得られた。土壇場で、オリンピック組がいい形でゴールにつなげ、気持ちよく試合を終えた。これを自信に変えて、力強く、彼らを待ち受ける厳しい道のりを歩んでいくことを期待したい。

<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>(了)

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